重要文化財「大分県吹上遺跡出土品」の保存修理実施

更新日:2021年03月31日

吹上遺跡出土品画像

 重要文化財「大分県吹上遺跡出土品」は、日田市に所在する吹上遺跡の墓域で発見された一括出土品です。

 墓域は平成7年の発掘調査で、弥生時代中期前半から後期初頭頃(紀元前2世紀から紀元前後頃)に継続的に営まれた木棺墓3基、甕棺墓7基で構成されています。このうち4基の墳墓からは、武器類や装飾品などの豪華な副葬品が出土し、日田地域にも中国の史書に記載されるような「クニ」に相当するまとまりが存在したと考えられます。

 また、出土品のうち貝輪は人骨と共に出土していて、具体的な着装状況を知ることができ、弥生時代の葬喪儀礼の実態を知る上で欠かすことができない貴重な事例といえます。

 以上のような評価から、出土地は平成8年3月29日に大分県の史跡に指定され、出土品のうち銅剣・銅戈、鉄剣などの武器類、南海産の大型巻貝を使った腕輪、ガラス管玉、硬玉製勾玉を含む装飾品と甕棺の577点は、平成22年6月29日に国重要文化財に指定されました。

 保存修理は、この577点を7年にわたって計画的に行ったもので、最終年度である平成29年度は、5号甕棺上下甕(2点)、6号甕棺下甕(1点)の計3点の保存修理を実施しました。

 これまでに平成28年度は4号甕棺上下外甕(3点)、6号甕棺上甕(1点)の計4点の保存修理、平成27年度には2号甕棺上甕(1点)、3号甕棺上下甕(2点)の計3点の保存修理、7号甕棺墓の台座作成、平成26年度には4号甕棺墓出土銅戈(1点)と付着木質、ガラス管玉(525点の保管箱)、4・5号甕棺墓出土硬玉製勾玉(2点)、1号甕棺墓上甕(1点)、2号甕棺墓下甕(1点)、7号甕棺墓(1点)、平成25年度には4号甕棺墓出土ゴホウラ貝輪(15点)と1号甕棺墓下甕(1点)、平成24年度には1号木棺墓出土銅剣(1点)と5号甕棺墓出土イモガイ貝輪(17点)、4号甕棺墓出土ガラス管玉(525点)、平成23年度には4号甕棺墓出土鉄剣(1点)と2号甕棺墓出土銅戈(1点)の計574点の修理作業を実施しています。

平成29年度の保存修理内容

修理前の状況
修理前

 5号甕棺上下甕と6号甕棺下甕は器面の風化が著しく、亀裂の増加や表面の剥離、軟弱化が見られるなど不安定な状態で、また、保管と展示が一体的に行える収納方法が脆弱でありました。

修理の内容
修理後
保存箱収納状況

 甕棺は解体してクリーニングを行い、アクリル樹脂溶液を含浸強化と復元を行い、収納保管や展示までが一連に行える桐製の専用保存箱を作成しました。
 なお、今回の保存修理は、公益財団法人 住友財団の助成と文化庁の補助を受けて実施しました。

平成28年度の保存修理内容

修理前の状況

平成28年度修理前写真

 4号甕棺上下外甕と6号甕棺上甕は器面の風化が著しく、亀裂の増加や表面の剥落、軟弱化が見られるなど不安定な状態で、また、保管と展示などが一体的に行える収納方法が脆弱でありました。

修理の内容

修理後の状況
H28修理後の格納状況

 甕棺は解体してクリーニングを行い、アクリル樹脂溶液を含浸強化と復元を行い、収納保管や展示までが一連に行える桐製の専用保存箱を作成しました。また、7号甕棺は保管提示が行えるように専用保存箱を作成しました。

 なお、今回の保存修理は、公益財団法人住友財団の助成と文化庁の補助を受けて実施しました。

平成27年度の保存修理内容

修理前の状況

保存修理前画像

 2号甕棺上甕と3号甕棺上下甕は器面の風化が著しく、亀裂の増加や表面の剥落、軟弱化が見られるなど不安定な状態でした。また、平成26年度に保存修理が完了した7号甕棺は状態が安定しているものの、保管と展示などが一体的に行える収納方法が脆弱でありました。

修理の内容

保存修理後画像

 甕棺は解体してクリーニングを行い、アクリル樹脂溶液を含浸強化と復元を行い、収納保管や展示までが一連に行える桐製の専用保存箱を作成しました。また、7号甕棺は保管展示が行えるように専用保存箱を作成しました。

 なお、今回の保存修理は、公益財団法人住友財団の助成と文化庁の補助を受けて実施しました。

平成26年度の保存修理内容

平成26年度保存修理後画像

 平成24年度に修理が終了している4号甕棺墓出土ガラス管玉(525点)と銅戈(1点)、4・5号甕棺墓出土硬玉製勾玉(2点)は状態が安定しているものの、保管と展示などが一体的に行える収納方法が脆弱で、銅戈付着木質は水漬けであるため、非常にもろい状態でした。また、甕棺は器面の風化が著しく、剥落や軟弱化が見られるなど不安定な状態であした

 ガラス管玉・銅戈・硬玉製勾玉は並べて保管・展示が出来るように専用保管箱を作成しました。銅戈付着木質はPEG溶液を含浸強化しました。甕棺は収納保管や展示までが一連に行えるようにしました。

 なお、今回の保存修理は、公益財団法人住友財団の助成と文化庁の補助を受けて実施しました。

平成25年度の保存修理内容

平成25年度保存修理後画像

 4号甕棺墓出土のゴホウラ製貝輪は、表面や破損面の風化が著しく、非常にもろい状態で、1号甕棺墓下甕は、器面の風化が著しく、剥落や軟弱化が見られ、不安定な状況でした。

 ゴホウラ貝輪はアクリル樹脂溶液を含浸強化し、欠損部分の復元を行いました。甕棺は解体してクリーニングを行い、アクリル樹脂溶液を含浸強化し、復元を行いました。さらに、保管のために専用の桐箱を作成し、形状に合わせて収納できるものとし、甕棺は収納保管や展示までが一連に行えるようにしました。

 なお、今回の保存修理は、公益財団法人住友財団の助成(ゴホウラ貝輪のみ)と文化庁の補助を受けて実施しました。

平成24年度の保存修理内容

平成24年度保存修理後画像

 1号木棺墓出土の銅剣は表面の微細な亀裂が多数入り刃部には錆の進行が認められる状態で、5号甕棺墓出土のイモガイ貝輪は方面や破損面の風化が著しく非常にもろい状態、4号甕棺墓出土のガラス管玉は風化により脆く、破砕されたものも認められる状態でした。

 銅剣はアクリル樹脂を減圧浸透させて強化を図り、イモガイ貝輪はアクリル樹脂溶液を滴下させて強度を増し、エポキシ樹脂を充填して補強しました。ガラス管玉はアクリル樹脂に含浸し、破損しているものは復元しました。さらに保管収納のために専用の桐箱を作成しました。

 これらの保存修理は、公益財団法人住友財団の助成(銅剣とイモガイ貝輪のみ)と文化庁の補助を受けて実施しました。

平成23年度の保存修理内容

平成23年度保存修理後画像

 4号甕棺墓出土の鉄剣は表面の剥がれやサビの進行が著しく、破損の危険性があり、2号甕棺墓出土の銅戈は非常にもろい状態でした。

 鉄剣・銅戈にはアクリル樹脂を浸透させ、破損箇所にはエポキシ樹脂を補填させることで補強を図りました。さらに、保管のために専用の桐箱を作成し、鉄剣・銅戈の形状に合わせて収納できるものとしました。

 これらの保存修理は、公益財団法人「住友財団」の助成(鉄剣のみ)と文化庁の補助を受けて実施しました。

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