2020年人権コラム「心、豊かに」

更新日:2021年04月30日

『人権コラム 心、豊かに』は、「広報ひた」1日号に掲載(毎月)しています。

迷信に惑わされない心【1月1日号掲載】

 年末年始の時期には年越しそばやおせち料理を口にする人も多いのではないでしょうか。これらの料理や使われる食材にはそれぞれに込められた意味があり、昔から「縁起」を担ぐ目的でお正月に食べられてきました。
 おせち料理の重箱には「めでたいことを重ねる」、黒豆には「マメに働く」、海老には「腰が曲がるまで長生きする」というように、使われる道具や食材の一つひとつに新しい年を迎えるための意味や思いが込められています。
 こうした季節や人生の節目において福を招くことや、災いを避けるために行われた風習が時代の中で形を変えながら受け継がれてきました。しかし、こうした風習が根拠のない偏見を生むきっかけになってしまうものもあるのです。
 生活の中で「大安」や「仏滅」という言葉を見たり聞いたりすることがあるのではないでしょうか。これはその日の吉凶を示すとされる「六曜(ろくよう/りくよう)」と呼ばれるもので、先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口の六つからなる暦注(れきちゅう:暦に記載されている曜日などの項目)の一つです。この六曜自体に科学的根拠や良し悪しがあるわけではありません。そのため、現在では六曜の記載されていないカレンダーや手帳も販売されています。しかし、日によって避けるべき事柄や時間帯などがあるとされていることから、「こんな日に○○するなんて…」等の否定的な発言をしてしまう場合があります。
 このような、昔からの風習や迷信を気にしすぎて相手に不快な思いをさせたり、傷つけたりすることはあってはならないことです。日本には伝統的な風習が多くありますが、ただ「昔からそうしているから」という理由で続けるのではなく、そこに込められている意味について一度考え、押しつけや誤解が生じないように引き継いでいくことで、日々の生活がより豊かになるのではないでしょうか。

 

我が子の幸せとは【2月1日号掲載】

 バレンタインデーは近年、日本でも親しい人や大切な人などにチョコレートを贈る行事として広まっています。諸説ありますが、3世紀後半頃、遠征する兵士の士気の低下を防ぐために結婚を禁じた当時のローマ皇帝に反対したバレンタイン司祭が処刑された日とされる2月14日がバレンタインデーの由来であるといわれています。このように、本人の意思と関係なく結婚が許されないことは現代の日本でも起きており、その中には自分ではどうすることもできず、周囲の人に結婚を反対されている場合があります。
 大分県が平成31年に実施した「人権に関する県民意識調査」の中で「あなたは、同和問題(部落差別問題)として、現在、どのような問題が起きていると思いますか」という設問に対し、「結婚問題で周囲に反対されること」が46%と最も多くなっており、前回の調査(平成26年実施)からは2.5%減少しているものの、いまだ部落差別の問題として結婚差別があると考えられています。
 また、同調査の「あなたのお子さんが同和地区の人と結婚するとしたら、あなたはどうしますか」という設問に対しては、「同和地区の人かどうかは関係ない、そのことで反対などしない」が、40.8%と最も多くなっています。一方、「絶対に反対」が2.4%、「反対するが、やむをえない」が10%、「同和地区でない方がよいが、反対しない」が21%となっており、反対はしないものの、積極的に賛成ではない意見を含めると約3割が、自分の子供が被差別部落の人との結婚に消極的であると考えられます。
 結婚は人生の中でも大きな節目の1つです。自分の子供が将来幸せに暮らせるか、相手は信頼できる人なのか等心配になることも多いでしょう。そんなときこそ偏見による誤った判断にとらわれるのではなく、正しい判断をすることが、本当の我が子の幸せにつながるのではないでしょうか。

 

見た目ではわからない障がい【3月1日号掲載】

 3月3日は桃の節句として知られていますが、「耳の日」でもあることをご存知でしょうか。耳の日は日本耳鼻咽喉科学会の提案によって、一般の人たちにも耳の病気のことや健康な耳の大切さを知ってもらうため1956年(昭和31年)に制定され、毎年3月3日には啓発活動等も行われています。ところで、耳が聴こえにくい状態を「難聴」と言いますが、難聴には生まれつきの人や高齢化に伴うものだけでなく、長時間大音量で音楽等を聞くことなどで発症するイヤホン難聴(音響性難聴)のように、どんな人でも難聴になる場合があり、誰もが聴覚障がいの当事者になる可能性があります。
 一方で、聴覚障がいのある人はその見た目だけでは障がいがあることが分かりづらく、呼びかけられても気付かない、緊急時の警報やサイレンなどが聞き取れず取り残されてしまうといったように、十分な理解が得られず誤解されたり、困っていても気付いてもらえなかったりすることがあります。
 では、聴覚障がいのある人とうまくコミュニケーションをとるにはどうすればよいのでしょうか。聴覚障がいのある人とコミュニケーションをとるには、手話、口話(口の動きから何を言っているか推測し、会話する方法)、筆談等の方法があります。手話は、双方が習得していなければコミュニケーションが取れず、口話は同音異義語などが伝わりにくいことがあり、筆談は正確に伝えることができる反面、手話や口話に比べて時間がかかるなど、それぞれの方法にはメリットやデメリットがあり、相手や状況に応じて適切な方法を選ぶことが必要です。
 近年では聴覚障がいに限らず、障がいのある人に対して合理的な配慮が求められるようになってきました。本当に必要な支援は相手や置かれた状況によって異なるため見極めることは難しく、だからこそ、障がいのある人でもない人でも困っている人と接する際には、一人ひとりと向き合おうとする意思をもってコミュニケーションをとることが一番大切なことなのではないでしょうか。
 

様々な「出会い」【4月1日号掲載】

 4月から職場や学校などで新生活が始まり、様々な新しい出会いを経験する人もいるのではないでしょうか。その中には、障がいのある人や外国にルーツを持つ人、セクシュアルマイノリティの人など様々な人権問題に悩んでいる人がいるかもしれません。また、身近に悩んでいる人はいないと思っていても、誰にも言えずに一人で苦しんでいる人がいるかもしれません。
 人権問題に悩んでいる人と実際に出会ったり相談を受けたりしたとき、どのように接すればよいでしょうか。繊細な問題に立ち入り過ぎてもよくありませんが、距離を取り過ぎて相手を傷つけてしまうこともあります。そこで大切なことは、相手が抱えている問題について知ろうとする意思を持つことです。どのようなことに悩んでいるのかを聞いたり、直接聞きにくい場合は相手が抱えている問題について調べたりして理解を深めることで、良好な関係に近づけることができるのではないでしょうか。
 相手が抱えている問題について調べるといっても、インターネットをはじめ、様々な情報が溢れています。気軽に調べられる反面、中には誤った情報も多く存在しています。誤った情報によって相手を傷つけないようにするためには、情報収集は慎重に行う必要があります。判断に迷ったら、官公庁や同様の問題で悩んでいる人を支援する団体等が発信している情報を調べてみるのも良いかもしれません。
 どんな接し方をすれば相手が嫌な思いをしないで済むかは一人ひとり違っていて、悩んでいることに触れてほしくないと思っている人もいます。しかし、何も知らないことで相手を知らず知らずのうちに傷つけてしまう可能性もあります。どんな問題であっても「自分には関係ない」ということはありません。日頃から様々な問題に関心を持っておくことで、今後の新生活がより豊かになる良い「出会い」につながるのではないでしょうか。
 

「こどもの日」も「母の日」?【5月1日号掲載】

 毎年5月第2週の日曜日にある「母の日」は日ごろの母への感謝を表す日として日本でも広く浸透してきました。日本に限らず、世界の多くの国に「母の日」があり、母親に日ごろの感謝を伝える習慣があります。また、日本の「国民の祝日に関する法律」には、5月5日の「こどもの日」も「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」と定められています。このように、1年に2回“母親に感謝する日”がある日本ですが、働く“お母さん”たちの中には、様々な問題に悩んでいる人もいます。
 例えば、妊娠している従業員が短時間勤務などを利用していることに対して、上司や同僚から嫌みを言われたり解雇などの不利益な取り扱いを示唆されたりするマタニティハラスメントや、職場復帰後に「子どもがいるから長時間働けない」と判断されて、働き方や待遇などが本人の希望に添っていないものになるといった問題があるのです。
 しかし、社会の中でCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の意識が高まってきたこと等によって、ハラスメントに対応する相談窓口の設置や、本人の希望を取り入れた勤務形態の見直しをしたり、職場に託児施設を併設したりして職場復帰しやすい仕組みをつくるなど、働く人の育児と仕事の両立に向けた取り組みを積極的に推進している企業や団体も着実に増えてきています。
 これからの社会は女性をはじめ、障がいのある人や外国人、セクシュアルマイノリティの人など多様な人たちの活躍が求められています。そうした社会の実現のためには、企業の取り組みに任せるだけでなく、私たち一人ひとりが助け合いの意識を持つことで、働くお母さんたちのみならず、全ての人が働きやすい職場環境を形成していくことができるのではないでしょうか。
 

不安に負けない心【6月1日号掲載】

 新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、日本国内でも感染が拡大する中、緊急事態宣言が発令され、外出自粛が要請されるなど、私たちの生活は大きく変わりました。緊急事態宣言解除後も、ソーシャルディスタンスの確保やテレワークの導入など新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践が求められています。
 その中で、インターネット上などで新型コロナウイルスに感染した人やその家族、濃厚接触の疑いがある人や医療従事者などが心無い誹謗中傷を受けてしまうといった、ウイルスとは別の被害が出ています。その他にも「新型コロナウイルスに感染しているかもしれない」と噂されて職場や地域の中で孤立してしまうといった問題もあるのです。
 このような問題の背景には、目には見えないウイルスへの「恐怖」や、いつ終息するか分からないという「不安」があると考えられます。最悪の場合、死亡してしまうケースもある中で「自分や家族の命を守りたい」という思いから、つい攻撃的な言動をとってしまうことがあるのです。これは新型コロナウイルスに限った話ではありません。感染率が低く、治療方法などが解明されているハンセン病や、感染経路が限定され治療薬の開発によって発症を遅らせたり症状を緩和させたりすることが可能になったHIVであっても、病気への誤った認識から差別や偏見が残っているように、「感染するかもしれない」という不安感は時に人の心を攻撃的にしてしまいます。
 しかし、不安を理由に感染した人やその家族などに何をしてもいいということにはなりません。むしろ、「もし自分が感染していたら自分や家族も誹謗中傷を受けてしまうかもしれない」と考えてしまい、症状が出ても受診しない人が増えて、感染が拡大するという悪循環の原因を作ってしまいます。こんなときだからこそ、部屋だけでなく心も換気して風通しを良くすることで、ウイルスだけでなく差別や偏見の感染も予防できるのではないでしょうか。
 

心まで離れすぎないように【7月1日号掲載】

 7月7日の七夕といえば天の川を挟んで離れ離れになった織姫と彦星が1年に一度会うというロマンティックな話を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。そんな織姫と彦星ほどではありませんが、新型コロナウイルスの影響で自粛期間が続いている間、「ステイホーム」や「ソーシャルディスタンス」といった言葉が表すように人との距離をとることが求められていました。また、5月の下旬に緊急事態宣言が解除されたとはいえ、今も人が集まる場所では「適切な距離」をとることが推奨されています。
 そのような中、新型コロナウイルス感染症と直接的に関係がないところでも差別や偏見が起こっています。例えば、行政の要請に添って、できる限りの工夫をしながら営業を続けているお店に、誹謗中傷の電話や貼り紙をするといった迷惑行為が各地で発生しました。その他にも、県外ナンバーというだけで、車を傷つけられる等の嫌がらせを受けたり、外国人というだけで、いわれのない非難を受けたりするといったことも起きました。
 感染症の拡大を防ぐためには一人ひとりの慎重な行動が不可欠です。しかし、自分や従業員の生活のためにどうしてもお店を開けなければいけない人に対してまで、過剰に非難することは人権侵害につながってしまう場合があります。また、県外ナンバーや外国人に対する嫌がらせ等の問題も、許されないことであり人権侵害となり得るのです。
 今回の新型コロナウイルス感染症の例に限らず、大きな事故や災害などの非常事態に、「不謹慎だ」と感じる行動をしている人がいるかもしれません。しかし、そこで「相手にも何か事情があるかもしれない」と思いやりの心を持つことができれば、相手を傷つけずに済むかもしれません。物理的に距離をとる必要はあっても、心の距離は相手から離れすぎないようにしたいものです。
 

「常識」を疑う心【8月1日号掲載】

 「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションである」これは特殊相対性理論などで知られる物理学者のアルベルト・アインシュタインが残した言葉です。学問の世界では、昨日まで常識だと思われていたことが新たな発見によって覆ることがよくあります。これは、生活の中でも同様のことが考えられるのではないでしょうか。基本的な“常識”は社会生活を送るうえで不可欠な要素ですが、自分が常識だと思っていることが偏見に基づいた思い込みということもあります。
 2017年(平成29年)に内閣府が実施した「人権擁護に関する世論調査」の部落差別に関する設問の中で『部落差別が存在する理由』について「昔からある偏見や差別意識をそのまま受け入れてしまう人が多いから」という回答が55.8%と最も多くなっています。このように、最初に出会う部落差別に関する情報が間違ったものだったとしても、それを受け入れてしまい、差別意識が広がってしまう場合があるのです。
 また、『部落差別等の同和問題を知ったきっかけ』については「学校の授業で教わった」の22.9%に次いで「家族(祖父母、父母、兄弟等)」が19.6%、「テレビ・ラジオ・新聞・本等」の16.5%となっています。学校の授業以外の全ての情報が間違っているわけではありません。しかし、部落差別の解消を目的に行われる授業に対して、家族や親戚には部落差別に対し誤った認識を持った人がいたり、その他の情報媒体にも根拠のない偏見に基づいた情報が存在したりすることによって差別意識を受け入れてしまう実態があります。逆に『部落差別等の同和問題を解消するための方策について』の設問では「人権尊重の意識を一人ひとりがもっと自覚すべき」が最も多く、50.6%となっています。
 部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消のためにも、今自分が“常識”だと思っていることが本当に正しい知識なのか、もう一度考えてみる必要があるのかもしれません。
 

尊厳が守られる社会【9月1日号掲載】

 9月の第3月曜日は「敬老の日」です。「国民の祝日に関する法律」には「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」日であると定められています。
 現在、平均寿命の伸びや少子化の影響で、総人口のおよそ4人に1人が65歳以上となっており、さらに日田市ではその割合が3人に1人となっています。このような高齢社会の日本では高齢者の豊かな知識や経験を生かした社会での活躍が求められており、実際に80代、90代になっても様々な方面で活躍している人も少なくありません。一方で、高齢者に対する虐待などの人権侵害は深刻な問題の一つです。
 2006(平成18)年に高齢者虐待の防止及び養護者に対する支援等の促進を目的に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法)が施行されました。この法律では、暴力行為や身体の拘束といった「身体的虐待」、食事や生活の世話をしなかったり、必要な医療的ケアを放置したりする「介護・世話の放棄・放任」、言語や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって精神的苦痛を与える「心理的虐待」、本人との合意がない、あらゆる性的な行為やそれを強要する「性的虐待」、本人の合意なしに財産や金銭を使用したり、本人の希望する金銭の使用を理由なく制限したりする「経済的虐待」などの行為が高齢者虐待として定義されています。
 高齢者虐待防止のためには高齢者だけでなくその世話や介護を行う養護者にも支援が必要です。多くの場合、養護者に初めから虐待をしようとする意思はなく日々の世話や介護の負担が身体的・精神的な苦痛となり追い詰められて虐待に繋がってしまいます。だからこそ、周囲の人が気に掛けることで、養護者が追い詰められてしまう前に支援を行うことができるはずです。
 高齢者への人権侵害は、誰もが当事者となり得る問題です。年齢にとらわれず相手の尊厳を大切にすることが、誰もがいくつになっても活躍できる社会に繋がるのではないでしょうか。
 

イタズラでは済まされない人権侵害【10月1日号掲載】

  10月31日はハロウィンの日として日本でも広く認知されるようになりました。ハロウィンの日に、仮装した子供たちがお菓子をねだる際に言う「Trick or Treat(お菓子をくれないとイタズラするぞ)」という言葉を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。一方で、「イタズラ」では済まされない「人権侵害」になっている場合もあります。
インターネット上での人権侵害もその一つで、2019年に総務省が行った「通信利用動向調査」によると、現在国民の約9割がインターネットを利用しており、それに伴い匿名による書き込みができることを悪用し、個人のプライバシーや名誉を侵害するなどの人権問題が起きています。
 例えば、他人の個人情報や写真などを本人に無断でインターネット上に公開することや、特定の人に関するデマやフェイクニュースなどをSNS等で拡散するといった行為は、本人はイタズラ目的であったとしても、場合によっては誹謗中傷の被害に遭ったり、危険な違法行為に巻き込まれたりする可能性があります。
 また、被害を受けた人がその情報を消そうとしても、一度インターネット上に公開された情報を完全に消去することは非常に困難です。そのため、過去の一回だけの投稿や書き込みであってもずっと誹謗中傷などが繰り返され、被害者を傷つけ続けることになります。そのため、SNSなどで情報を発信する際は、まず正しい情報であるか、発信しても問題ないかを考え、その上で自分以外の情報を発信する場合は、事前に説明し相手の承諾を得るといったマナーも必要になってくるのではないでしょうか。
 ハロウィンの仮装は元々、ハロウィンの日に出るとされる魔女や悪霊から身を守るためのものだったといわれています。インターネットの世界では高い匿名性によって発信者の情報は保護された状態で、誰かを一方的に傷つけてしまうことがあります。仮装でどんな姿になっても、心までは怪物にならないように気を付けなければなりません。
 

「当たり前」への感謝【11月1日号掲載】

 毎年11月23日は「勤労感謝の日」です。「国民の祝日に関する法律」によると、「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。」と定められています。しかし、日々の忙しさやストレス等から日頃の感謝の気持ちや思いやりの心が欠けてしまうこともあるのです。
 例えば、些細なミスや態度が気に入らないなどの理由から、過剰な謝罪やサービスを要求する「カスタマーハラスメント」があります。「お客様は神様」という言葉がありますが、これはサービスを提供する側の心構えのようなものであって、いくらお金を支払っているといっても、対価を超える過剰な要求をして良いわけではありません。また、本当に「神様」のような人であるならば、より寛容に相手に接することができるのではないでしょうか。
 また、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、医療関係者に対する誹謗中傷や、偏見に基づく差別の問題もあります。本来であれば、新型コロナウイルスと最前線で闘っている医療関係者に対して、感謝はしても誹謗中傷や、差別などがあってはならないのです。その他にも、同じ職場で働く仲間に対して、立場や関係性を盾に理不尽な要求や非難等を行う「パワーハラスメント」等の問題もあります。
 普段接している家族や友人、同僚などの人たちはもちろんのこと、普段会うことのない、多くの人たちの手によって、私たちの生活は成り立っています。しかし、新型コロナウイルスの終息が見えず、親しい人でさえ気軽に会うことが難しい状況の中、普段から接している人でさえも感謝の気持ちを伝えることは難しくなっています。さらに、会ったこともない人への感謝となると、中々できることではありません。
 せっかくの「国民たがいに感謝しあう」日ですから、自分の生活を支えてくれている誰かの「勤労」に「感謝」するのも良いかもしれません。
 

様々な“無意識の偏見”【12月1日号掲載】

 皆さんは「アンコンシャス・バイアス」という言葉をご存知でしょうか。あまり聞きなじみがないかもしれませんが「無意識の偏見」を意味する言葉です。これは誰もが持っているもので、それ自体が悪いわけではありません。しかし、状況によっては様々な人権問題の原因になってしまう場合があります。
 例えば、大雨で警報などが出ても「自分は大丈夫」「まだ問題ない」と思ったことはないでしょうか。これは「正常性バイアス」といって、自分にとって都合の悪いことなどを過小評価してしまう無意識の偏見の一種です。ときに正常性バイアスは、もしも自分がハラスメント等の加害者になっていたとしても「自分の行動に問題はない」と考えてしまい、被害者を傷つけていることに気付けないことがあります。
 また、「血液型がA型の人は〇〇な性格で、B型の人は△△だ」といったような勝手なイメージを持っていることはないでしょうか。これも「ステレオタイプバイアス」という無意識の偏見の一種です。ある特定の集団や属性を持つ人に対して持っている先入観を常識だと思い込んで、それとは反対の事例があっても、「少数の例外である」ととらえてしまうことがあるため、相手に正しい評価ができないことがあるのです。
 その他にも、「有名な人が言っているから本当のことだろう」と考えてしまう「権威バイアス」や過去の自分を過大評価してしまう「自己奉仕バイアス」等といった、行き過ぎてしまうと人権侵害になりかねない無意識の偏見もあるのです。
 このように、無意識の偏見は誰もが持っているものなので、誰もが当事者になる可能性があります。誰かを傷つけないためには、自分にも「無意識の偏見」があることをしっかりと自覚することが必要です。まずは日々の生活を振り返って、自分の言動に思い当たるものがないかチェックしてみるのも良いのではないでしょうか。
 

この記事に関するお問い合わせ先

日田市 市民環境部 人権・部落差別解消推進課 啓発推進係(人権啓発センター)
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