2022年人権コラム「心、豊かに」

更新日:2023年03月08日

『人権コラム 心、豊かに』は、「広報ひた」1日号に掲載(毎月)しています。

大人としての自覚 【1月1日号掲載】

毎年1月の第2月曜日は「成人の日」です。「国民の祝日に関する法律」には「おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。」と定められています。
では、“おとなになったことを自覚”するとはどのようなことなのでしょうか。それは「自分の言動に責任を持つ」ことではないでしょうか。しかし、「未成年に責任がない」ということではありません。未成年と成人ではできることに大きく差があります。それに比例して責任も大きくなるのです。
このことは、様々な人権問題についても同様のことが言えます。例えば、近年横行しているインターネット上の掲示板や、SNS等で特定の人や団体を誹謗中傷したり、差別的な書き込みをしたりすることもその1つです。インターネットは誰もが利用できるため、誤った情報でも不特定多数の人が目にすると、偏見などが広がりやすく、加えてインターネット上で書き込まれたものを完全に削除することは非常に困難であるため、一回の書き込みであっても、拡散され数が集まれば大きな事件につながる可能性もあります。
現在、法務省ではインターネット上の誹謗中傷対策を強化するため、刑法の侮辱罪を厳罰化する方針を固めています。侮辱罪の刑罰は「拘留(30日未満)」か「科料(1万円未満)」でしたが、厳罰化によって「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」に変更となり、より大きな責任を問われるようになりました。
近年、インターネット上の人権問題に限らず、様々な人権問題で「自分の行動に責任を持つ」ことが求められるようになってきました。新成人だけでなく、全ての大人が「自覚」を持つことでより良い社会の実現につながるのではないでしょうか。

今こそ大事な「咸宜」の心 【2月1日号掲載】

毎年2月23日は「咸宜園の日」です。廣瀬淡窓が現在の地に咸宜園を開いた日にちなみ、2012(平成24)年に定められました。市では、この日に関連して講演会等を開催しています。
咸宜園は、大分県日田市・茨城県水戸市・栃木県足利市・岡山県備前市の4市で申請を行った「近世日本の教育遺産群-学ぶ心・礼節の本源-」のストーリーが2015(平成27)年に国(文化庁)が創設した日本遺産の第1号認定を受けました。
そんな咸宜園の「咸宜」とは「咸く宜し」という意味で、“すべてのことがよろしい”という、年齢・学歴・身分を問わず、門下生一人ひとりの意思や個性を尊重する淡窓の教育理念が込められています。
そして、この「咸く宜し」の考え方は今の時代にこそ必要な考え方ではないでしょうか。現代では社会の多様化が進む一方で、特定の人や団体に対して社会から排除しようとするような事象も起きています。
例えば、特定の国の出身者、又はその子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの一方的な言動「ヘイトスピーチ」や、新型コロナウイルス感染症等に関する知識や理解の不足から、日常生活や学校、職場等、社会生活の様々な場面で差別やプライバシーを侵害されるなどの人権問題が発生しています。その他にもインターネット上でその匿名性を利用し、他人を誹謗中傷したり、個人の名誉やプライバシーを侵害したり、あるいは偏見・差別を助長するような情報を発信したりするといったことも発生しています。
このように、未だ解決できない様々な人権問題に対して「咸く宜し」の考え方を一人ひとりが持つことで、全ての人の意思や個性が尊重される社会に近づくのではないでしょうか。

みんなで作る“公共の福祉” 【3月1日号掲載】

毎年3月20日は「国際幸福デー」です。2012年7月に幸福が世界中の人々の共通の目標であり、願望であることを認め、公共政策に反映されるべきものとして、国連総会で193か国の加盟国の満場一致で採択されました。
日本国憲法にも、第三章「国民の権利及び義務」の第13条に「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と記されており、幸福を追い求めることは基本的な人権として認められています。
しかし、“自分の幸福”ばかりを追い求めていれば良いというわけでもありません。上記の条文にもあるように「公共の福祉に反しない限り」という前提があります。また、憲法の第12条にも「憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と記されています。では、“公共の福祉”とはどのようなものなのでしょうか。諸説ありますが、簡単に言えば「社会全体の利益」のことです。利益といっても金銭的なものだけでなく、社会を構成する私たち一人ひとりの人権が損なわれないことなども含まれています。
このように、いくら自分の幸福のためと言っても自分勝手に振る舞って、迷惑行為や危害を加えるといったような他人の人権の侵害に該当するような行為は許されていないのです。
「それは当然のことだ」と思われるかもしれません。しかし、新型コロナウイルス感染者等に対して、嫌がらせや排除しようとするなどの問題はこの当然のことが正しく行われないために起きている場合があります。
一人ひとりが互いを尊重し合いながら、自分の幸福を追求することで本当の“公共の福祉”につながるのではないでしょうか。

あなたから始める「最初の一歩」【4月1日号掲載】

1800(寛政12)年の4月19日、伊能忠敬が現在の北海道へ測量に出発したことにちなみ、4月19日は「地図の日」とされています。 また、日本地図を完成させるために最初の一歩を踏み出した日でもあることから「最初の一歩の日」とも呼ばれています。伊能忠敬は50歳から天文学などを学び、1800年の出発の時点で56歳であったといわれています。当時の50代というと家業を次世代に引き継ぎ、隠居している人がほとんどでした。その中で、伊能忠敬は学問を修め、学んだ学問を生かして現在の日本地図のベースとなる正確な地図を作ったのです。
まさに「物事を始めるのに遅いということはない」ということを体現していると言えます。これは、現代を生きる私たちにも見習うべき点があるのではないでしょうか。特に人権問題について考えるとき、「今更、自分一人が何かしても意味がない」「上の世代の考えを変えるのは難しい」「放っておけばいずれなくなる」といった消極的な意見が出ることがあります。しかし、今もなお残っている人権問題は、そのままでは無くすことができないものばかりです。
例えば、昔から引き継がれてきた偏見からいわれのない差別を受ける部落差別や、周囲の理解が得られずに社会の中で生きづらさを抱えてしまうセクシュアルマイノリティ等の人権問題があります。また、近年ではインターネット上で様々な人権問題に対して、誤った情報や差別、偏見を助長するような内容の情報があふれています。このような状況を改善していくためには、差別や偏見を広げないように小さなことでも実践していくことが大切です。たとえ最初は一人でも個人個人がそれぞれ心掛けることで、少しずつでも変わっていけるはずです。
 伊能忠敬の偉業に思いを馳せて、まずは自分が変わるための「最初の一歩」の機会にしてみてはいかがでしょうか。
 

「心の平和」を守るために【5月1日号掲載】

 5月16日は「平和に共存する国際デー」です。この日は、平和・連帯・調和の持続可能な世界を築くために、違いと多様性の中で団結して生き、共に行動したいという思いを支持することを目的に制定されました。
 「平和」と聞くと、とてもスケールの大きなもののように感じてしまうかもしれませんが、平和には「戦争や紛争がなく、世の中がおだやかな状態にあること」のほかにも、「心配やもめごとがなく、おだやかなこと」という意味が含まれています。
 このように、平和とは私たち一人ひとりに関係する身近なものです。しかし、現代社会にはその平和を乱すような人権問題が多く残っています。インターネット上での偏見や差別もその一つです。私たちの社会は、性別、年齢、身体的特徴、国籍、宗教、信条、所属など様々な要素がそれぞれ異なる人たちで構成されています。その要素のどれか一つでもマイナスなイメージが広がってしまうと、「心配やもめごとがなく、おだやか」な社会生活を送ることは難しくなってしまいます。
 SNSや動画投稿サイトを使えば、誰でも簡単に、世界中に向けて発信することができるインターネットの世界では、特定の要素を持つ人に対して悪意を持って発信された情報や、悪気はなくても無意識の偏見をもとに発信してしまっている情報が多く存在します。また、そのような情報は、意図的に見ようと思っていない人も目にしてしまうことがあり、場合によっては、その情報を見た人が偏見を持ってしまうかもしれません。
 こうした偏見や差別を広げないために、日頃から、目にする情報を鵜呑みにせず、一度自分で考えてみたり、情報を発信する際に、偏見が混じっていないか確認したりすることが大切です。一人ひとりの “ 心の平和 ” を守ることが、「平和に共存する」社会の構築につながるのではないでしょうか。
 

誰もが当事者になる「高齢者の人権」【6月1日号掲載】

世界のほとんどの国において高齢者の人口は増加しており、その増加に伴い高齢者の「虐待の数」も増加していくと予想されています。これまでプライベートな問題とされてきた高齢者虐待は、世界中で認知され始めましたが、多くの国でその実態があまり把握されていない暴力の一つです。高齢者の虐待については、殴る・蹴るなどの暴力による「身体的虐待」、暴言や無視、嫌がらせなどの「心理的虐待」、勝手に年金・預貯金などを使う「経済的虐待」や、「性的虐待」、介護・世話を放棄・放任する「ネグレクト」があると「高齢者虐待禁止法」に明記されています。
2021(R3)年に日田市民を対象に実施した「人権に関する市民意識調査」で、『あなたが、住宅を購入したり、借りたりするなど、住まいを選ぶ際に次のような条件の場合、避けることがあると思いますか』という設問の中の「近隣に老人ホームなどの高齢者施設がある」という条件に対しては全ての世代で“全く気にしない”が一番多く選ばれています。しかし、『あなたは、次の人権に関する宣言や法律などについてどの程度ご存じですか』という設問の「高齢者虐待防止法」については“名前だけ知っている”が全ての世代で一番多くなっています。このように、高齢者を避ける気持ちはなくても、どのようなことが虐待につながるかはよく知らない人もいる可能性があります。また、虐待をしている人に自覚がない場合や介護などで追い詰められている場合もあり、周りの人が虐待のサインに気付くことが重要です。その反面、『「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に関する意識の変化』の2019年の回答で、「賛成」「どちらかといえば賛成」の回答を合わせると、男女ともに3割以上存在することも事実です。
2020(R2)年の国勢調査では日田市の高齢化率は35.82%となっており、日田市においても高齢者の人権問題は重要なテーマの一つです。虐待につながる行動をしっかりと理解すれば、高齢者虐待は防ぐことができます。6月15日は「世界高齢者虐待啓発デー」です。年齢を重ねれば誰もが当事者になりうるこの問題について、一度考えてみてはいかがでしょうか。
 

国や文化を超えた友情を築く【7月1日号掲載】

7月30日は「国際フレンドシップ・デー」です。2011年(H23年)7月の国連総会において、国や文化を超えた友情が世界平和を促進することを想起する日として制定され、「国際友情デー」とも呼ばれています。
また、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致によって採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、「パートナーシップで目標を達成する」ことが17番目の目標として掲げられています。SDGsは、「誰一人取り残さない」ことを目指しており、「ジェンダー平等の実現」、「人や国の不平等をなくす」、「平和と公正を全ての人に」など、人権問題に係る目標が多く掲げられています。その上で、人権問題を含めた様々な社会問題の解決には、「国際的な協力=友情」が不可欠であることが謳われています。      
ただ、コロナ禍の終息が未だに見えず、国際情勢が不安定な現況では、「国や文化を超えた友情の実現なんて不可能だ」との声も聞こえてきそうですが、そんな困難の中でもできることがあります。
それは、“相手を尊重し、理解しようとする”ことです。性別、年齢、人種、国籍、宗教、信条、身体的な特徴など、様々な特性を持つ相手に合わせた適切な言動をとることは、一朝一夕で身につくような簡単なことではありません。さらに、「国や文化を超えた友情」を築こうとするのであれば、相手を理解することはより重要になってきます。
様々な特性について正しい知識がないと、何気ない一言が、相手を傷付けてしまうこともあります。そうならないためにも、普段から人権問題についてアンテナを張っておくことが大切です。相手を尊重し、理解しようとすることが、どんな相手とでも“国や文化を超えた友情”を築き、“世界平和を促進する”ことにつながるのではないでしょうか。
 

次の100年に残さない部落差別【8月1日号掲載】

8月22日は、明治から昭和にかけて活躍した詩人であり小説家「島崎藤村」の命日(藤村忌)です。
藤村の著作に部落差別を題材にした「破戒」という作品があります。被差別部落の出身を隠し生きてきた教師である主人公の青年が、様々な出会いや経験を通じ差別と向き合う物語です。この「破戒」が1906(明治39)年に発表されてから100年以上が経過しましたが、題材となっている部落差別は現在も残ったままです。
もちろん、「破戒」が執筆された時代から様々な変化(進展)があり、全く同じ状況が続いているわけではありませんが、時代の変化に合わせ、部落差別は形を変え現在も存在しています。中でも、部落差別問題に対し誤解を招くような情報をSNSなどで発信することや動画投稿サイトなどで許可なく特定の地域を撮影し、被差別部落として晒すなど、一瞬にして差別や偏見を拡散させる行為は特に問題視されています。
こうした状況を踏まえ、部落差別の解消を推進し、部落差別のない社会を実現することを目的に「部落差別の解消の推進に関する法律(部落差別解消推進法)」が2016(平成28)年に施行されました。部落差別は過去の出来事であり終わったもの、またそっとしておけば、いずれなくなっていく― そのようなものではなく、今もなお続く深刻な人権侵害の一つであることを示すため、“現在もなお部落差別が存在する”と同法に明記されています。
日本で初めての人権宣言と言われる「水平社宣言」が出され、今年でちょうど100年。水平社の“水平”には、「人間は生まれながらにして平等な存在である」という思いが込められています。その思いをしっかりと次の世代に受け継いでいくことが、次の100年先に部落差別を残さないための大切な行動ではないでしょうか。
 

人権もマラソンも“自分のペース”で【9月1日号掲載】

紀元前450年9月12日、アテナイ(現在のアテネ)の名将ミルティアデスは、マラトンに上陸したペルシャの大軍を奇策で撃退しました。この戦いの勝利をアテナの元老に報告するために伝令役の兵士が選ばれ、兵士はマラトンから約40km離れたアテナまでを走ってその任務を果たしました。この故事にちなみ、9月12日は「マラソンの日」とされています(マラソン:marathonは、マラトン:Marathonの英語読み)。
やってみようと思えば、誰でもいつでも始められるマラソンですが、日頃から運動する習慣のない人が、いきなりフルマラソンのような長距離を走ることは…。まずは、運動する習慣を身に付け、基礎的な体力が培われたのちに、長い距離を走れるようになっていくのが通常の流れです。
人権問題も同様に、誰でも取り組むことができますが、日頃から人権について意識していないと、いざというときにどうしたらよいか分からなかったり、意図せず相手を傷付けるような言動をしてしまったりする可能性があります。このような事態を招かないために、人権問題に取り組む際にも、ある程度の“基礎体力”を備えておくことが求められますが、その“基礎体力”を向上させるには何が必要なのでしょうか。
それは、小さなことでも日頃から人権に関するアンテナを張っておくことです。「人権問題」を大げさに捉える必要はありません。例えば、女性や子供、高齢者の人権問題などは、自分自身を含め家族、友人、職場の上司や同僚などに関係することが多いはずです。そうした身近なところから「どんなことで困っているのか」や「どんな配慮ができるのか」を考えておくことで、いざ自分や周囲が人権問題に直面したときに、落ち着いた対応をとることができるのではないでしょうか。
人権問題もマラソンのように「自分のペース」でできることから始める、それが目指すゴールへの近道につながるはずです。
 

外してみよう心の “色眼鏡”【10月1日号掲載】

10月1日は「メガネの日」。
10月1日を “1001” と表記すると、両端の“1”が「メガネのツル」で、内側の“0”が「レンズ」に見立てられ、メガネの形を表しているとして「メガネの日」が制定されました。
自分自身も含め、家族や友人、職場の同僚など、多くの人がメガネを着用しており、メガネがないと生活に支障が出るという人もいます。しかし、メガネをかけているからといって、相手への接し方が変わってしまうことはありません。
ところが、それが“メガネ”から“車椅子”に変わるとどうでしょうか。
メガネと車椅子のどちらも「それがなければ生活に支障が出てしまう」という点は共通していますが、“車椅子”を利用している人を見ると、「何かしてあげないといけないのではないか」、「どう接していいか分からない」などと考えてしまう人がいるようです。
では、なぜメガネと車椅子で見方が変わってしまうのでしょうか。周囲に車椅子を利用し生活している人をあまり見掛けない(見慣れていない)ことが要因の一つとなり、「障がい者」というフィルターを通して見ることで、「何か“してあげないといけない”」という先入観を持ってしまうのではないでしょうか。
車椅子に限らず、白杖や補聴器などを利用し、自立した日常生活を送っている人に対する周囲の手助けが必要な場面は、数多くあると思いますが、「何でもしてあげないといけない」ということではありません。どんな手助けが必要なのか、コミュニケーションを取りながら接することを心掛けていれば、自然と障がいに対する“色眼鏡”は外れていくのではないでしょうか
 

知っていますか?「子どもの権利条約」【11月1日号掲載】

秋の気配が一段と深まり、厳しい寒さを迎えようとする11月は、子供たちの成長を祝うとともに、基本的な人権を保障することについて、しっかりと考える季節のようです。
11月15日は、お馴染みの「七五三」ですが、国連は、1954(昭和29)年に世界の子供たちの相互理解と福祉の向上を目的として、11月20日を「世界子どもの日」と制定しました。また、1959(昭和34)年の11月20日には、国連総会で「子どもの権利宣言」が採択され、さらに30年後の1989(平成元)年の同日、全ての子供に人権を保障する初めての国際条約となる「子どもの権利条約」が、国連総会で採択され、翌年には日本もこの条約を批准しています。
「子どもの権利条約」には4つの原則があり、それぞれを分かりやすく表現したものが下記です。
1.全ての子供の命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できる保障
2.子供にとって最も良いことを第一に考える
3.子供は自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができる。そして、大人はその意見を十分に考慮する
4.全ての子供は、どんな理由でも差別されない
といったように、子供たちが健全に育っていく上で非常に大切なことが定められています。しかし、現代でもいじめや虐待などの子供たちを取り巻く人権問題が残っています。
子供も“独立した人格を持つ一人の人間”です。生活の大半を家庭や学校で過ごす子供たちに、周囲ができることは多くないかもしれません。しかし、子供たちの声をしっかりと受け止め、社会全体で見守ることが、子供たちの健やかな成長につながるのではないでしょうか。
 

どちらも必要な「シンパシー」と「エンパシー」【12月1日号掲載】

「同情、又は共感」を意味する、シンパシー(sympathy)という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
では、これに似た言葉で「人の気持ちを思いやること」の意味を持つ、エンパシー(empathy)はどうでしょうか。
シンパシーは「他人と感情を共有すること」、エンパシーは「他人と自分を同一視することなく、他人の心情をくむこと」を指しており、このどちらかが欠けてしまうと、人権の尊重は成り立たなくなってしまうようです。
例えば、「共感する力:シンパシー」が欠けると、傷ついた人の心に寄り添うことが難しくなります。また、「心情をくむ力:エンパシー」がなければ、自分の話し方や行動によって他人が傷ついてしまうことがあるという想像が及ばなくなります。
それでは、この二つの力を身につける(育む)にはどうすればよいのでしょうか。「共感する力」は、様々な出来事を通して経験を積むことが一番です。ただ、多くの人の心に寄り添えるような経験を積むことは簡単ではないことから、人と人との関わり合いのみに着眼せず、小説や映画などの登場人物に自分を重ねて考える練習を繰り返すと、徐々に共感する力が身についてくると言われています。
もう一つの「心情をくむ力」は、様々な人権問題についてアンテナを張ることが大切です。どんな人がどんなことで困るのか、また傷ついてしまうのかということを事前に知っておけば、他人の思いを想像することができるようになるはずです。
国際社会が団結して取り組む、SDGsの目標にあるように「誰一人取り残さない」社会の実現には、互いの人権を尊重する、この二つの力が必要不可欠です。
 

この記事に関するお問い合わせ先

日田市 市民環境部 人権・部落差別解消推進課 啓発推進係(人権啓発センター)
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