2024年人権コラム「心、豊かに」

更新日:2024年04月19日

「人権コラム 心、豊かに」は、「広報ひた」1日号に掲載(毎月)しています。

相手の役に立つ「心配り」【4月号掲載】

「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、「推進法」)」の改正法が施行され(令和6年4月1日)、事業者にも「合理的配慮の提供」が義務付けられました。
日常生活における合理的配慮とは、「道理にかなっている状態の上で、良い結果となるように、あれこれと心を配ること」ですが、推進法では、「障がいを持つ人と持たない人が、同じく平等な社会生活を送れるよう、社会的障壁を排除すること」と位置付けられています。
推進法では「障がいを理由とする差別」を1.不当な差別的取扱い 2.合理的配慮を提供しないの2つに分けて考えています。1.は、(正当な理由がなく)「入店や入居の拒否」、「商品やサービスの制限」など、障がい者の権利利益を侵害することです。2.は、障がいのある人から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合、ア)負担になりすぎない範囲 イ)社会的障壁を取り除くために必要で合理的であるにもかかわらず配慮しないことです。車いすの利用者が段差の前で困っているときに、「スロープを出す」、「手伝う」などの行為を提供しない、聴覚に障がいのある人が筆談を求めても応じないなどの行為が当てはまります(経済産業省の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」に、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例が記載されています)。
「合理的配慮の提供」は誤解されやすく、" 思いやり"と受け止めてしまう傾向がありますが、少し異なります。例えば、垂直に移動するためには、誰もが階段が必要であるように、障がいのある人が感じる障壁を取り除く行為が「合理的配慮の提供」であって、これは誰もが当たり前に持っている権利を侵さないという基本的な考えが前提となっています。
推進法では、合理的配慮の提供に際して、過重な負担や優遇を求めているものではありません。求められていることは、全ての人が尊重され、お互いに理解し合う共生社会の実現に必要な「心配り」です。

未来を紡ぐために【3月1日号掲載】

「ギャップ」。二つの事象や状態、期待と現実などの間に存在する「差異」を指す言葉。例えば、男女間で家事や育児などに対する意識や負担(責任)に差異がある"家事ギャップ"。また育児に関して、親世代や祖父母世代との考え方の差異を表す"子育て世代間ギャップ"などがあります。
"家事ギャップ"は、総務省が実施した「社会生活基本調査(令和3年)」で顕著に示されています。6歳未満の子を持つ世帯の1日の家事(育児・介護・看護なども含む)に費やす平均時間は、夫の1時間54分に対し、妻は7時間28分となっており、平成28年と比べると夫婦間の差は縮まっているものの、まだまだ相当の開きがあるようです。
この差をできるだけ縮め、どちらか一方に負担が偏ることのないよう、家事や育児、さらには仕事を含む暮らしの全般については、夫婦で対話し、知識などのギャップを埋める努力が大切です。その際には、内閣府が作成した「夫婦が本音で話せる魔法のシート/○○家作戦会議」を参考にするのもひとつの方法です。
共働き世帯の増加によって、祖父母が育児に参加する場面が多くなったことで、注目されるようになった"子育て世代間ギャップ"は、そのギャップに対する戸惑いから、トラブルに発展してしまうケースもあるようです。世代間で育児に関する考え方に差異があるのは当然なことかもしれませんが、昔と今の子育ての特徴をお互いに認知することは、ギャップの解消に役立つはずです。祖父母世代が親世代の子育てを応援し、親世代は祖父母世代から大きな協力を得るという相互作用により、子育てに「ゆとり」が生まれるという期待が持てます。
時代とともに生活環境や物ごとに対する価値観も激しく変わっていきます。家庭(家族間)でコミュニケーションを図り、お互いに尊重し価値観を共有することが、次世代を担う子どもたちの個性を伸ばし、穏やかな生活を送るための導きになるのではないでしょうか。

「お客様は神様です」【2月1日号掲載】

「人前で歌うとき、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできない。お客様を神様とみて歌う」。ただ、「お客様は神だから徹底的に大事にして媚びなさい。何をされようが我慢して尽くしなさいと発想、発言したことはまったくない」と、かの有名人は、表題(フレーズ)の真意を説明しています。
日本が誇る「おもてなしの文化」は、外国人にも強烈なインパクトを与えています。相手(顧客)に快適な時間を過ごしてもらうことの喜びを求めるという、自国にはない心遣いの文化に心を動かされ、日本のサービス現場で働くことを強く希望する外国人も少なくないようです。
ところが、この文化を過剰に受け止め、さらには自己の承認欲求を満たすため、暴言や暴行、脅迫、不当な要求に偏ってしまう「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が問題視され続け、沈静化の兆しは見えてきません。「度を超えた」行為は他の顧客への迷惑に止まらず、企業の経営の阻害、またそこで働く労働者の就業環境に不利益をもたらすなど、許すことのできないものとなっています。
カスハラが起こる要因は、「目の前で起こった出来事を迷惑行為に変えてしまう、受け手(顧客)の性質」という個人の内面的な課題とされており、その要因の解消はほぼ不可能と言えます。このため、悪質な行為を繰り返す客の宿泊を断ることが可能となった改正旅館業法の施行(令和5年12月13日)や、ある航空会社は運送規約を定めた約款を見直し、搭乗を拒否できる迷惑行為の明示の検討を始めるなど、各方面でカスハラを抑止する動きが始まっています。
「おもてなしの文化」がこの先も称賛を受けるために、その質を高めるための顧客の声は重要です。ただ、相手の非ばかりを取り上げて、迷惑行為によって自分の心の欲求を満たそうとする、そんな「神様」であってはいけません。

「日本語」で大丈夫【1月1日号掲載】

1995(平成7)年に発生した阪神・淡路大震災のとき、日本で生活・滞在する多くの外国人が、日本語または英語を十分に理解できず、必要な情報が不足し、適切な行動につながらなかったというケースがありました。
このことを教訓とし、日本語が不慣れな外国人に、災害発生時、素早く的確に情報を伝えることを目的に考案されたのが「やさしい日本語」です。当初は、災害時の情報伝達手段として使われていましたが、今では、平時の活用においても研究され、行政情報や毎日のニュース発信など、全国の様々な分野で広がっています。
ある地方都市で暮らす外国人を対象とした調査では、「やさしい日本語」であれば理解できるという人は6割を超えることが分かりました。一方で、英語力を問う質問では、「英語ができる」と回答した外国人は、会話力で2割弱、読解力では2割強に留まり、英語に翻訳すれば、多くの外国人に伝わるといった考えは当てはまらないことが分かっています。
日本では、地震や風水害などは「いつでも起こりうる」という"意識"の備えを呼び掛けていますが、国によっては起こる災害が違い、また災害が起きたときの不安要素もそれぞれです。例えば、一定の安全を確保するために「避難所」を活用しますが、避難所が無料で誰でも入れる場所であることを知らない人もいるなど、日本人の感覚では気付かないこともあります。
2023(令和5)年11月30日現在、日田市で生活をする外国人は564人。「やさしい日本語で対応してくれる、やさしい日本人」がいることを多くの外国人が知っているはずです。「助け合いは必要だが、言葉が伝わらないだろう」というマイナスの先入観を持たず、簡単な言葉や短い文でゆっくり話し掛けてみてください。

この記事に関するお問い合わせ先

日田市 市民環境部 人権・部落差別解消推進課 啓発推進係(人権啓発センター)
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