2025年人権コラム「心、豊かに」
「人権コラム 心、豊かに」は、「広報ひた」に掲載(毎月)しています。
おたがいさまの一言【4月号掲載】
「ダブルケア」。
子育てと介護の両立状態を指し、このダブルケアに直面し苦悩する「ダブルケアラー」と呼ばれる人が増えています。
ダブルケアラーが増えている理由として、真っ先に挙げられるのが、晩婚化と出産年齢の高齢化です。第一子を出産する年齢が上がったため、子育てが落ち着いてから始まっていたとされる介護が、子育てと重なるようになり、10年以上にわたりダブルケア状態が続く例もあるようです。
このダブルケアには問題とされていることがいくつかありますが、中でも大きな負担として問題視されているのが育児費用や介護費用といった「経済的な負担」、また周囲からの理解が得られないために孤立してしまう「精神的な負担」などが挙げられます。
2016年に発表された内閣府の調査によると、日本のダブルケア人口は約25万人。ただ、この調査は「育児=小学生以下」、「介護=親・祖父母(義理を含む)」と対象を限定していたため、「子育て」を高校生までと捉え、また「介護」に兄弟姉妹を加えれば、ダブルケア人口は25万人を大きく超えると推測されています。
団塊の世代の高齢化によって、国民のおよそ5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となる2025年問題に差し掛かり、その後の2040年には、団塊ジュニア世代が高齢期を迎え、現役世代の急減が危惧されています。併せて、高齢者が高齢者のケアを担う「老老介護」、子どもが介護を担う「ヤングケアラー」、そして文中の「ダブルケア」など、ケアに関する様々な問題はすでに表面化しています。
日本社会の健全な基盤の創造のため、誰もがケアの当事者となる可能性があることを認識することが大切です。そして、「特定の人のみ」に重い負担がかかってしまうことのないよう、家族や親族との協力はもちろん、近隣の人や職場の理解を深め「おたがいさま」の関係を構築していくことが求められています。
その投稿“待った”【3月号掲載】
「匿名ならば大丈夫。誰の仕業か分からないし」。こういった無責任かつ自己中心的な意識のもとに、他者の誹謗中傷や差別的な表現をインターネット上に書き込むことは許されないものです。悪質なものに対しては、(それが一度だけであっても)発信者の特定と責任の追及がなされ、場合によっては大きな代償を伴うこととなります。
誹謗中傷が要因となり、自死を選んでしまうような悲劇が起こるなど、ネット上の「問題投稿」の流通は深刻さを極めています。ただ、ネット上でそのような投稿を見つけても、「消す方法が分からない。そもそも消せるものなのか」など、「削除」については「社会的課題」として議論が続けられてきました。
こうした中、「情報流通プラットフォーム対処法(通称)」が令和6年5月に可決・公布され、1年を超えない範囲内で施行されることとなりました。この法律では、大規模なプラットフォーム事業者(ネットを管理運営する企業等)に対し、削除対応の迅速化を図るため、「申出窓口を含む申出に対する体制の整備と申出に対する判断・通知」、また運用状況を透明化するため、「削除基準の策定と削除した場合の発信者への通知」などを義務付けています。
要約すると、削除を申請した投稿の「消える(消す)」または「消えない(消せない)」の結果が申出人に伝えられ、「消える(消す)」場合は、これまでよりもスピーディーに実行されるというものです。
しかしながら、法律の整備によって問題の根本が解決されるものではありません。問題投稿(人権侵害)の根絶には「1.他者の誹謗中傷や差別的な書き込みはしない2.不確かな情報や他者のプライバシーに触れる情報を書き込まない3.書き込みが不特定多数の人に見られる可能性がある」という意識と認識を持つことが大切です。
情報に対する接し方、考え方を大きく問う社会環境の形成が始まっています。全ての人が、生きていく上で情報を必要不可欠なものとして「大切に扱う」ことが求められています。
つながる思い【2月号掲載】
素敵だなあと思って買った品物。その品物の製造から販売までの過程で、「人権が侵害」されていたら、どう思いますか。
セクハラやパワハラなど、企業活動において発生する様々な「人権問題」。こうした問題への対応は、時として企業の価値に大きな影響を与えます。2020年、政府が「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」を策定。その後の2022年には、企業における人権尊重の取組を後押しするため、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を整備しています。
サプライチェーンとは、商品や製品が消費者の手元に届くまでの1.材料調達2.製造3.輸送・配送4.販売5.消費といった一連の流れのことです。この流れの中で、実際に起こった(または起こり得る)人権問題として、1.材料生産現場の児童労働のリスク2.製造現場における外国人労働者への差別3.トラック運転手の長時間労働4.販売店の労働環境の悪化、商品広告の差別的表現5.消費者の健康や安全に対する配慮不足などが挙げられます。
企業はこの流れを重視し、自社事業に関わる全ての労働者(正社員だけでなく、契約社員やアルバイト・パート社員等を含む)の人権はもちろんのこと、取引先の労働者、さらには顧客・消費者までの全ての人権を尊重しなければなりません。自社外で起こる人権問題を把握し、それを解決することは容易ではありませんが、自社の社員が顧客・消費者や取引先の社員に対して差別的な対応を行う、また工場建設のために住民に立ち退きを強制するなどの問題が発生しないよう、「自社における人権啓発と教育」を徹底し、それを「連鎖」させる行動が求められています。
人権を尊重する社会の構築には、行政や地域における行動に加え、企業の実践力が不可欠です。企業が持つ「価値」を知り、その価値を応援していくことで、社会の好循環が生まれるはずです。
それぞれの「立場」【1月号掲載】
日本に在留する外国人の数、約341万人(2023〈令和5〉年末現在)。それぞれの目的を果たすため日本で生活していますが、言語、宗教、文化、習慣などの違いから、外国人をめぐる人権問題(アパートへの入居拒否、就労の際の不合理な扱いなど)が注目されています。
2022(令和4)年、内閣府の人権擁護に関する世論調査における"日本に居住している外国人に関し、体験したことや身の回りで見聞きしたことで、人権問題だと思ったことは?"との質問では、1.風習や習慣などの違いが受け入れられない(27.8%)2.就職・職場で不利な扱いを受ける(22.1%)3.差別的な言葉を言われる(19.5%)といった回答が挙げられています。
この調査が実施された同年には、岡山市内の建設会社で働く技能実習生に対する人権侵害行為が大きく報道されました。これは外国人の技能実習生が、職場の同僚などから2年に渡り、暴言や暴行を繰り返し受けた事件で、外国人技能実習機構への通報によって発覚したものです。
技能実習生に限らず、日本で生活する外国人は、言葉が通じないことによるミスや習慣の違いによる誤解や誤認などに対する不安を抱えながら生活しています。
その一方で、これまでに祖国で培ってきた大切な文化や生活習慣などからの転換が容易ではないことを理解してほしいという願望も持ち合わせています。
日本に多くの外国人が生活しているように、多くの日本人が諸外国で同じような不安を抱え過ごしています。国際的な広い視野に立ち、各国の文化や生活習慣を理解し、それを受け入れ尊重していくことが、「共存」の基本姿勢です。
外国人をめぐる人権問題(偏見や差別)をなくしていくことは、社会基盤の強化につながります。それぞれの立場を思いやり、同じ地域で暮らす一員として「助け合う」ことが、言葉や文化の壁を乗り越える有効な手段となるでしょう。
この記事に関するお問い合わせ先
日田市 市民環境部 人権・部落差別解消推進課 啓発推進係(人権啓発センター)
〒877-8601 大分県日田市田島2丁目6番1号(市役所別館1階)
電話番号:0973-22-8017(直通)
ファックス番号:0973-22-8259
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更新日:2025年04月30日