2017年人権コラム「心、豊かに」

更新日:2021年03月31日

『人権コラム 心、豊かに』は、「広報ひた」1日号に掲載(毎月)しています。

CSR(企業の社会的責任)【1月1日号掲載】

 「企業(仕事)」にも人権に配慮した活動や取組が求められる『人権の世紀』。では、企業(仕事)と人権には、どのような関係があるのでしょうか。
 企業が、ある生産活動を成し遂げ⼀定の利益を生み出すには、様々な人との関わり合いやつながりを切り離すことはできません。共に働く仲間はもちろん、消費者・利⽤者(顧客)、取引先の労働者、株主、地域住⺠など、多くの「人権」に配慮した⾏動がなければ、企業としての信頼を得ることは困難です。
 そのような中、近年、国際社会では『CSR』(Corporate Social Responsibility)に対する関心が高まっています。CSR を日本語で表すと「企業の社会的責任」。その社会的責任には、環境対策、コンプライアンス(法令順守)、社会貢献、商品やサービスの安全性などと共に「人権尊重」が含まれています。
 CSR に取り組むメリット、『人権の尊重によって、誰もが働きやすい職場環境が整備され、それは従業員の働く意欲の向上、ひいては生産性の向上にとつながる。→ 顧客情報などの適切な管理や、安全性の高い製品は顧客の安心感へとつながり、企業の評価を高める。→ 企業の評価の高まりは、株主や取引先などへのメリットにつながる。→ 企業の社会的信頼を高める。』このような好循環を組織の内外にもたらすという考えのもと、企業が人権を守ることは、企業の成⻑につながるとの観点から、人権はCSR の重要なキーワードとなっています。
 いま、国内外の多くの企業でCSR の取組が⾏われ、企業によってはCSR 専門の部署が設置されています。職場において、「人権」の重要性を共有し、「人権の視点」を持ち仕事に励む―。そのことが、「人権の世紀」を築く、ひとつのきっかけになるはずです。

大切なサポーター【2月1日号掲載】

 目や耳、手足にハンディのある人の手助けとなる「身体障害者補助犬」。
 「盲導犬」、「介助犬」、「聴導犬」の総称が補助犬で、平成14 年に補助犬の使⽤や育成、同伴受⼊れの義務などを定めた「身体障害者補助犬法」が施⾏されました。この法に基づき認定を受けた犬が補助犬で、特別な訓練を受け、適切な⾏動が取れるようにしつけられています。
≪補助犬の活動≫
‣盲導犬 目の不⾃由な人の歩⾏をサポート。胴体に⽩、又は⻩⾊のハーネス(胴輪)を付けているのが目印。
‣介助犬 体幹や手足の不⾃由な人の⽇常⽣活をサポート。例えば、落とした物を拾う、ドアの開け閉めをするなどのほか、着替えを手伝うことも。外出する際の目印は、介助犬と書かれた胴着。
‣聴導犬 耳の不⾃由な人に⽣活上必要な⾳を知らせて⾏動をサポート。例えば、ドアチャイムの⾳、⾞のクラクション、⾚ちゃんの泣き声などを知らせる。外出する際の目印は、聴導犬と書かれた胴着。
 厚⽣労働省の調査では、全国で「盲導犬」966 頭、「介助犬」73 頭、「聴導犬」64 頭が活動しています。大分県内では、「盲導犬」14 頭が活動し、「介助犬」と「聴導犬」は存在しません。活動頭数からも分かるように、盲導犬は少しずつ活躍の場を広げていますが、介助犬や聴導犬を含めた「補助犬」となると、その認知や理解はまだまだ不⼗分なようです。
 補助犬は、ハンディのある人の⾃⽴と社会参加を助ける存在です。共⽣社会の実現のため、補助犬に対する理解を深めるとともに、多くのサポーターの活躍が望まれます。

理不尽な現実「部落差別」を解消しよう【3月1日号掲載】

 “就職・結婚”は、人生の中で希望にあふれる節目。それを生まれた場所や住んでいる場所を理由に拒まれる―誰もが、生まれて来る「時」「場所」「家族」を選ぶことはできません。
 このように、⾃分⾃⾝ではどうすることもできない事実によって理不尽な差別を受ける―それが、部落差別であり、⽇本固有の人権問題といわれる「同和問題」です。
 平成28 年12 月16 ⽇、「現在もなお部落差別が存在する」と明記された『部落差別の解消の推進に関する法律』が施⾏されました。この施⾏によって、国や地方⾃治体には部落差別の解消を目指して「相談体制の充実」、「教育・啓発の推進」、「部落差別の実態調査」に取り組んでいくことが求められています。
 かつては、就職の際に本籍や家族構成、家族の職業など、本人の適性や能⼒とは関係ないことを明らかにさせられ、それが合否に影響するといった事例が存在していました。
 また、全国の被差別部落の名称や所在地をまとめた差別図書を参考に、応募者の本籍地や住所地を調べ、合否の判断としていたこともありました。そして、このような調査は、結婚にも適⽤され、部落に関係することが分かると、親や親戚からの強い反対を受け、ときには家族の縁を切られることもありました。
 このような実態の解消に向け、例えば、本籍地などの記⼊欄がない「全国⾼等学校統⼀応募書類」を使⽤する取組を広め、さらには、⼾籍や住⺠票の不正取得をなくすと共に、⾝元調査に協⼒しない意思表⽰となる「本人通知制度」を導⼊しましたが、いまも⽇本から理不尽な現実は消え去っていません。
 法務省の発表では、同和問題に関する人権侵犯処理件数は、平成26 年で107 件、平成27 年は113 件となっています。「部落差別は過去のこと。終わったこと。」ではなく、今も存在します。この現実から目をそらさず、真剣に考えるときです

広がれ「イクボス宣言」【4月1日号掲載】

 <イクボス>社員や部下の育児・介護に理解を⽰しつつ、⾃分⾃⾝も仕事に励み、かつ私⽣活を楽しむ経営者や上司。(性別不問)男性の「育児参画」を表す⼀定の指数が「育児休業取得率」。政府は2020 年までに、この取得率を「13%」まで引き上げたい意向です。しかし、2015 年度の統計では2.65%とかなり低調で、⼥性の取得率(2007 年度以降80%を超える)とは大きな開きがある状況です。
 男性の育休取得を拒む要因のひとつが『パタハラ(パタニティーハラスメント)』。パタニティーは「父性」を意味し、『パタハラ』は、男性が育児・介護を⾏う権利や機会を侵害する⾔動とされています。例えば「育児は⼥の仕事」、「育休は出世にひびく」などの意識から、男性に休みを認めない、または休んだことに対する嫌がらせなどがあたります。
 今年1 月の「育児・介護休業法」等の改正によって、パタハラやマタハラは事業主に防止措置が義務付けられましたが、家庭における男⼥の役割を固定化する意識はいまだ根強く残っています。男性が育児や介護に積極的に参加できる環境を整えていくには、職場をはじめとする意識改⾰が急務です。
 そんな中、NPO 法人ファザーリングジャパンが提唱する『イクボス宣⾔』は、その改⾰の旗振り役になりそうな期待を感じさせています。この宣⾔は「仕事と私⽣活をバランスよく両⽴できるよう、部下を応援し⾃らは楽しむイクボス」になることを対外的にアピールし、その姿勢を⽰すものです。
 知事で初めて育休を取得した広島県の湯崎知事は、2015 年1 月に「イクボス」を宣⾔。これがきっかけとなり、昨年11 月には全国知事会で「知事⾃らイクボスとなりこの取組を推進し、仕事と⽣活が両⽴しやすい⽇本の実現を目指す」との宣⾔が全会⼀致で採択されました。
 男性社員や部下に対し「お⼦さんの誕⽣おめでとう、育休はいつから︖」と笑顔で問いかけるイクボス。そんな頼もしい「イクボス」の出現が待たれます。

一人ひとりの「人権」【5月1日号掲載】

 ⽇⽥市では、昨年9 ⽉「⼈権に関する市⺠意識調査」を実施しました。この調査は平成8 年以降、5 年ごとに実施しており、市⺠の皆様の⼈権に関する考えや意⾒を集約した上で、これまでの⼈権施策の成果や課題を分析し、今後の啓発活動に活かすことを目的としています。
 『⼈権』それは誰もが⽣まれながらに持つ「⼈間らしく幸せに⽣きる権利」であって、誰からも侵されることのない恒久かつ基本的な権利です。しかし、⽇本社会には年齢や性別、⽣まれ育った場所、⼈種などの違いを理由とする、様々な偏⾒や差別が存在しています。これらを総じて⼈権課題と位置づけ、法務省は⼥性や⼦ども、⾼齢者など17 項目にわたり、平成29 年度の⼈権に関する啓発活動協調事項を掲げています。
 昨年の市⺠意識調査の問いに「関⼼のある⼈権問題は(17 項目を列挙)」があります。これに対し、回答率の⾼い項目から「障がい者」39.4%、「インターネットなど」32.5%、「⾼齢者」30.0%、「⼦ども」27.5%、「⼥性」22.8%の順となっており、関⼼のある⼈権問題も様々であることが分かります。
 平成19 年3 ⽉「⽇⽥市⼈権施策基本計画」が策定され、「市⺠⼀⼈ひとりがお互いに⼈権を尊重し合う ⼼豊かな共⽣社会の実現」を目指し、⼈権教育や啓発活動が続けられてきました。しかしながら、計画策定から10 年が過ぎ、ヘイトスピーチやLGBT(性的
少数者)などの新たな⼈権課題への対応が必要なことや今回の市⺠意識調査の分析結果などを受け、今年度中に、より現状に即した「基本計画」に改める予定です。
 共⽣社会の実現には、今後も継続した⼈権教育及び啓発活動と、⼀⼈ひとりの⼈権意識の⾼揚に向けたたゆまぬ努⼒が必要です。市⺠の皆様には、様々な⼈権課題を自分自身の課題として捉え、学習会や研修会に参加するなどの積極的な⾏動をお願いします。


※意識調査の報告書は、市のホームページに掲載しています。
 

新しい教科書を手にするまで【6月1日号掲載】

 4 月、新学期を迎えた小中学校の教室で新しい教科書を手にする子どもたち―。
 昭和44 年、小中学⽣に教科書が「無償」で配られるようになりました。それまで、教科書は各家庭で準備しなければならず、古い教科書を譲ってもらい足りない教科書だけを購入するなど、多くの家庭では苦労が絶えませんでした。
 四国のとある地区の⺟親たちの苦労はより⼀層、困難を極めていました。⺟親たちが幼かった頃、親は部落住⺠であることを理由に就職差別などを受け、辛く苦しい⽣活を強いられていました。そんな親を助けようと、学校を休み家の手伝いや働きに出ましたが、十分な教育を受けられなかったことで、結果的に安定した仕事に就けない状態に…。せめてわが子には「学校で勉強させたい」と強く願えども、不安定な仕事ゆえ教科書の購入は、⽣活を脅かす⼤きな壁となっていました。
 ⺟親たちは、学校の先⽣と部落問題をはじめ様々な学習を重ねていく中で、憲法26 条の『義務教育は、これを無償とする』という条文に出会います。「自分と同じ思いをさせたくない」との願いは、「憲法で義務教育を無償とうたっているのだから、教科書も無償にし、子どもたちに十分な教育を受けさせたい」という熱い想いに変わり、その想いは教科書無償化運動に繋がります。
 直ちに教科書が無償とはなりませんでしたが、粘り強く運動を続け、それが多くの住⺠や団体等に⽀持され、やがてこの運動は全国に広がります。その後『義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律』が成⽴し、子どもたちは無償の教科書を手に
することができるようになりました。
 今も子どもたちは、みな平等に教科書を手に教育を受けています。教科書無償化の歴史は、差別が引き起こした弊害の重みを気づかせてくれると同時に、負の連鎖を断ち切り、差別を繰り返さないために共に助け合い⾏動することの⼤切さも伝えてくれています。

肌の色、どんな色【7月1日号掲載】

 「うすだいだい」、「ペールオレンジ」。クレヨンなどにこれらの名前で表記される色、2000 年前後までは「はだ色」と書かれていました。
 韓国では「はだ色」表記に関して、国家人権委員会が2001 年に陳情を受けています。委員会は「はだ色」という表記(表現)は、韓国憲法第11 条の平等権を侵害するといった理由から、「はだ色」を定めた技術標準院に改正勧告を⾏いました。
 いま、あなたの周りにいる人―。肌の色は、同じですか。親子や兄弟でさえ、肌の色がまったく同じとはいえないでしょう。地球上には、様々な国籍や⺠族の人々が暮らし、国籍や⺠族で肌の色が⼤きく違っていることもあります。
 ただ、この地球上に住む人間は、古くから肌の色に対する特別なこだわりを捨てきれずにいるようです。残念なことに、色による序列化や重⼤な差別事象が今も⾒受けられ、ときには国際的な対⽴や紛争につながってしまうこともあります。
 日本でも肌の色へのこだわりから、2015 年のミス・ユニバース日本代表に選ばれた⼥性に、⼀部で批判の声が上がりました。
 日本人の⺟とアフリカ系アメリカ人の⽗を持つ彼⼥は、いわゆるハーフ。幼い頃「色がうつるから」と遠足や運動会で手をつないでもらえず、肌の色にコンプレックスを持っていた彼⼥が、ハーフとして初めて日本代表に輝きました。
 批判の声は、その彼⼥の肌の色や目⿐⽴ちから「日本代表にはふさわしくない(日本人らしくない)」といったものでしたが、彼⼥はこの批判を「人種問題について提起するチャンスと考える」と前向きに語り、批判の声をかき消す勇気ある言動を示しました。
 日本人らしい肌の色とは、何色でしょうか︖肌の色へのこだわりが差別や先⼊観を招かぬよう、「その人⾃⾝」を認め、多様性を受け⼊れる心を忘れてはいけません。
 

「答申」に記された思い・・・【8月1日号掲載】

<同和問題は必ず解決できる>
 今から52 年前に出された『同和対策審議会』答申で明確にされた考えは、同和問題は⼈間によってつくられた差別であり、⼈間が解決できないものではないことを⽰しています。⾔い換えると、同和問題の「起因、歴史、経過」などを正しく学べば、いかに理不尽な問題であるかを認識できることを指摘しています。
 答申の中で、部落差別は「⼼理的差別」(差別的な⾔動、偏⾒など)と「実態的差別」(インフラの未整備など)に分けられ、それぞれの差別が作用し差別が繰り返される悪循環にあると記されています。
 この答申と差別の実情を基に、国は速やかな問題解決に向けた特別対策を昭和44 年から33 年間実施しました。その間の様々な取組によって、⽣活環境などの格差の解消は進み「実態的差別」には⼀定の成果がみられました。しかし、その⼀⽅で「⼼理的差別」に大きな変化はないままでした。
 それどころか、「⼀定の成果」を受け、「同和問題は終わった」、「もう、そっとしておけば無くなる」という感情(意識)が強まり、結果として「⼼理的差別」の実態が⾒えにくくなってしまう現実が明らかになってきました。
 今もなお、インターネット上での差別的な書き込みや結婚差別が起きています。昨年12 ⽉に出された『部落差別の解消の推進に関する法律』にも「現在もなお部落差別が存在する」と明記されているように、部落差別は解消されていません。
 答申の前⽂に、同和問題の「早急な解決こそ国の責務であり、同時に国⺠的課題」と謳われて52 年。答申の基本原則は今も色あせることはありません。いま改めて答申に学び、「同和問題の解決なくして、真の平等はなし」の強い思いを胸に、解決に向けた歩みを止めてはなりません。

命を守るための情報共有【9月1日号掲載】

 「あの⾳が鳴ると恐怖を思い出す」、「絶対に好きになれない⾳」。危険を知らせると同時に命を守る⾏動を促す、緊急速報メール(エリアメール)。
 昨年の熊本・⼤分地震、また7 ⽉の豪⾬災害の際も何度となく鳴り響いたあの⾳。気象庁をはじめとする各⾏政機関が、災害などが予⾒されるとき、住⺠の安全確保のために、迅速かつ正確な情報を伝える必要性から始めた情報伝達⼿段のひとつで、ほかにも防災⾏政無線やホームページ、防災メールなどがあります。
 今年3 ⽉、内閣総合戦略室が作成した「災害対応におけるSNS 活用ガイドブック」には、これまでの伝達⼿段に加え、スマートフォンなどで利用できる『ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)』の活用が情報の拡散に有効であると記されています。
昨年までの統計では、SNS を災害対応に活用している地方公共団体は934 団体で、平成26 年の調査開始以降、増加傾向にあります。
 SNS では、⾏政の投稿した情報を確認できることに加え、住⺠⾃⾝が⾃分の安否や刻々と変化する被害の状況や支援の要請などを投稿できます。また、投稿を知⼈と共有する「拡散」機能によって、不特定多数の⼈々へ情報が広がり、迅速な避難⾏動や救援物資の提供など、命を守る⾏動へのつながりが期待されます。
 ただ、災害時のSNS の活用は、誰もが簡単に情報発信でき、なおかつ凄まじい速さで情報が伝わるため、使い方を誤ると取り返しのつかない⼤混乱を招く可能性があることを忘れてはいけません。「興味本位で誤った情報を投稿する」、「信頼性のない情報を安易に拡散する」など、軽率かつ無責任な⾏動は決して許されないことです。これらのことを利用者すべてが理解して活用することが⼤切です。
 ⼈命に関わる緊急時に求められるのは、冷静かつ慎重な良識ある⾏動。そして、すべての⾏動の根元にあるもの、それは「助け合い」の心です。

「文字」と共に獲得する権利【10月1日号掲載】

<差別が文字を奪う>
 その引き⾦は就職差別。かつて、同和地区に暮らす住⺠は、幼い⼦どもの労働⼒にも頼らざるを得ないほど⾟く苦しい⽣活を強いられていました。
「働くことを求められた」⼦どもたちは、思うように学校に通えず、文字や数字の読み書き、計算などの基礎的な学⼒を⾝につけられぬまま大人になってしまいます。それにより、その後の人⽣でも、あらゆる機会を逸してしまうこととなります。
 「病院の受付で名前を書く」、「わが⼦に文字を教える」、「薬の用法・容量を読む」、「運転免許を取得する」―など様々なことに困難をきたすとともに、⽇常⽣活で多くの不⾃由や⾟酸しんさん、屈辱くつじょくを感じ続け、人間らしく⽣きる権利と尊厳さえも無くしてしまうのです。
 1960 年代、奪われた学習機会を取り返す「識字運動(学級)」が始まります。この運動の目的は、⽇常⽣活で用いられる簡単で短い文章を理解し「読み書きできる」ようになること。そのうえで当時の識字学級は、学習と同時に「なぜ⾃分は文字を知らないのか」という⾃らへの問いかけによって、⾃分⾃⾝の⽣い⽴ちや部落差別の現状を認識し、差別によって奪われたものは文字のみならず「人間らしく⽣きる権利」であることを⾃覚する場にもなっていました。
 まさに、<文字や数字の読み書きを学び習得することは、人間らしく幸せに⽣きる権利を獲得していく営み>そのものでした。
 昨年12 月、すべての⼦どもが安心して教育を受けられる学校環境や小中学校の教育を十分に受けることができなかった人への教育機会の確保などがうたわれた「教育機会確保法(略称)」が成⽴しました。不登校や外国籍など学びを求める人の現代の背景は様々ですが、「学ぶ権利を守る」こと=「人間らしく⽣きる権利を守る」ことに今も変わりはありません。学びを求める誰もが安心して学習できる多様な教育環境の整備が急がれています。

優しさの種を飛ばそう【11月1日号掲載】

 アサガオの種、観察してから⼟にまき、毎⽇⽔やり。ふた葉が出て、本葉が出て、つるが伸び、つぼみがふくらみ、ある朝ついに美しい花が咲く。
 多くの人が小学校の授業で経験し、アサガオの種の成⻑に不思議を覚え、植物の⽣命⼒に驚き、花が咲いた時の達成感や感動を語り合ったことでしょう。
 このような、花や植物を育てる体験を子どもたちの⼼の成⻑などに活かす取組の⼀つに、法務省が昭和57 年度から始めた「人権の花」運動があります。協⼒して花を育てる体験を通し、⽣命の尊さや優しさ、思いやりの⼼、人への感謝を学ぶことを目的に、全国の小学校などで取り組まれています。法務局⽇⽥⽀局管内では、⽇⽥市、玖珠町、九重町内の小学校を1年ごとに1校ずつ指定校としているため、市内の小学校が指定校になるのは3 年に1 回です。
 今年度指定校の前津江小学校では、5 月から子どもたちが協⼒して花のお世話を続けています。そして、前津江小を訪れる他校の児童や⽣徒とは、子どもたちが⽔やりなどの活動を⼀緒に⾏いながら「人権の花」運動のことを伝え、人権の⼼の輪を広げることにもつなげています。今月には、遠く離れた人にも人権の⼼の輪が広がるように、子どもたちが育てた花の種と人権への思いを込めた手紙をエコ風船に付けて飛ばす予定です。
 平成26 年度に「人権の花」運動で風船を飛ばした津江小学校の児童が感想文の中に、『人権の花運動は、私たちにやさしさや、人と人のつながりをあたえてくれます。遠くはなれた人からの感謝の手紙に「ありがとう」という文書が何回も書かれていました。自然と⼼があったまり、とても、やさしい気持ちになったことを今でも覚えています。』と記しています。花の種を介して、顔も知らない遠く離れた人と優しさを共有した経験は、人権を⼤切に思う気持ちと共にお互いの⼼に強く残っているはずです。
 前津江小から飛ばす種も新しい⼟地で芽吹き花を咲かせ、そして子どもたちの人権を⼤切に思う気持ちや優しさの種が人々の⼼まで届くことを願っています。

共に囲む食卓から生きる力を【12月1日号掲載】

 共働き世帯の増加や核家族化など、生活スタイルの多様化によって、幅広い年代にみられる『孤食』。
 文字通り「ひとりで食事をする状態」を指しますが、孤食は孤独感を強く感じるばかりでなく、好きな時に好きな物を食べる傾向から、栄養バランスの偏りや生活習慣の乱れを引き起こしやすいなどの問題が指摘されています。
 そのような中、「食育基本法」に基づいた国の計画や日田市食育推進計画では、子どもや高齢者の孤食に対する支援として『共食』の推進を掲げています。共食とは、誰かと共に食事をすることですが、計画の中では「何を作ろうか」と相談しながら料理を作ることや食後に料理の感想を語り合うことも共食に含まれるとされています。
 2012 年頃から子どもの貧困対策のひとつとして注目されている“子ども食堂”では、家庭で孤食になりがちな子どもにも無料もしくは安価で栄養満点な食事や団らんの場を提供しており、子どもの共食推進にも重要な役割を果たしています。また、子ども食堂の中には高齢者の孤食支援として、誰でも利⽤できる食堂もあります。ただ、残念なことに思い描いたような利⽤には結びついていない状況です。
 内閣府が作成した「高齢社会白書」では、65 歳以上の⼀⼈暮らしは年々増加しているとされています。恐らくは、それに合わせて高齢者の孤食も増加の⼀途をたどっていると推測できます。高齢者の孤食は、低栄養の状態になりやすい事やうつ病を発症しやすいという結果が報告されており、要介護状態につながることが懸念されています。
 誰かと⼀緒に食卓を囲むことで、規則正しい食事や食欲の増進につながり“生きる⼒”が育まれます。誰かと語らいながらの食事から社会との接点が生まれます。
 高齢者の方々がいきいきと地域で暮らし続けるためにも『共食』の機会拡充が急務となっています。

この記事に関するお問い合わせ先

日田市 市民環境部 人権・部落差別解消推進課 啓発推進係(人権啓発センター)
〒877-8601 大分県日田市田島2丁目6番1号(市役所別館1階)
電話番号:0973-22-8017(直通)
ファックス番号:0973-22-8259

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