2018年人権コラム「心、豊かに」

更新日:2021年03月31日

『人権コラム 心、豊かに』は、「広報ひた」1日号に掲載(毎月)しています。

ワンオペ育児からの脱却【1月1日号掲載】

 2010 年の新語・流⾏語トップテンに選ばれた『イクメン』。積極的に育児に関わる男性を表すこの⾔葉が社会に定着しつつある中、「⼦育ての実態は変わっていない︕」と訴えるかのように、『ワンオペ育児』が2017 年の新語・流⾏語にノミネートされました。“ワンオペ” とは、飲食店などで一人の従業員が全ての業務をこなす“ワンオペレーション”を略したものです。つまり、『ワンオペ育児』とは、家事や育児をひとりでこなす状態を表します。
 総務省の「社会⽣活基本調査」でも、相変わらず⼥性が家事や育児を担っていることが証明されています。6 歳未満の⼦どもを持つ夫と妻の家事・育児時間の合計を⾒ると、平成23 年は「夫︓51 分、妻︓6 時間57 分」、平成28 年では「夫︓1 時間6 分、妻︓6 時間52 分」。5 年間で男性が15 分⻑くなり、⼥性が5 分短くなったものの、依然として男性の6 倍以上の時間を⼥性は家事と育児に費やしています。
 しかし、厚⽣労働省が発表した「仕事と育児の両⽴に関する実態把握調査」の企業結果を⾒ると、単に男性が家事や育児を軽視している訳ではないことがわかります。「育休を取得しやすい(職場の)雰囲気」があると感じているのは、男性︓25.2%に対し、⼥性︓79.3%と大きく差が開いています。企業は男性の「仕事と育児の両⽴⽀援」について、55.9%がその必要性を感じているようですが、実態は企業の約7 割が「男性が休暇を取得しやすい環境づくり」に着手できていないばかりか、「育児参加促進の取組」に至っては8 割を超える企業が何も⾏っていない状況です。
 これまでに、育児休暇や短時間勤務制度など社会的制度は整ってきましたが、いまだに男性が制度の利⽤に踏み込めない状況が続き、結果として職場の理解が得られやすい⼥性が働き⽅を調整するのが現実のようです。
 年も新たになりました。家庭も企業も『ワンオペ育児』からパートナーや地域などで協⼒して⼦育てを⾏う「チーム育児」に舵を切り、2018 年の新語・流⾏語に『チーム育児』が選ばれる―。そんな明るい一年が願われます。

込められた熱い思い【2月1日号掲載】

<人の世に熱あれ、人間に光あれ>
 1922(大正11)年3 月3 ⽇、全国⽔平社創⽴大会で読み上げられた『全国⽔平社創⽴宣⾔=⽔平社宣⾔』は、⽇本で最初の人権宣⾔とも⾔われています。
 全国⽔平社は、被差別部落の人々が全国から集まり、厳しい差別からの解放を目指し創⽴されました。⽔平社の名を提唱した創⽴メンバーの阪本清⼀郎⽒は『⽔平』に込めた思いをこう語っています。
 ≪あらゆる尺度というものは人間が作った。そしてその尺度によっていろいろな差が出てくる。絶対に差ができないものは⽔平である。平等を表現するのは⽔平ということば以外にはない≫
 ≪人類は平等でなければならない、今の平等は平等ではない。公平であるかどうかということを⾒るにはいろんな尺度がある。しかし、どんな計器を持ってきてもそれに勝るのが、⽔の平らかさである、それ以上の尺度はない≫
この「⽔の平らかさ=平等」を目指し、これまでに様々な運動や取組が⾏われてきましたが、居住地や⽣まれた所、⺠族、性別、年齢等の違いに注目し、人間が作った尺度によって人の価値や優劣を判断するなど、残念ながら今も差別が繰り返されています。
 「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という差別との闘いが宣⾔されてから90 年以上の時が過ぎた2016(平成28)年、現在もなお部落差別が存在すると明記された『部落差別の解消の推進に関する法律』が施⾏されました。⾔い換えれば「人の世の熱も人間の光も十分ではない」のが現実です。
 ⽔平社宣⾔は、人間を尊敬し大切にすることで差別をなくそうとうたっています。差別する人がいるから、差別を受ける人が⽣まれる。人を尊敬することから、差別は⽣まれない。
 ⼀人ひとりの他者を尊敬する⼼から、あらゆる差別を許さない社会へ、そして真の⽔平の実現を望み、この⾔葉で結びます。
<人の世に熱あれ、人間に光あれ>

介護休業「93日」まで【3月1日号掲載】

 平均寿命と健康寿命の差を数字で表すと男性︓9.02 年、⼥性︓12.4 年。(平成25 年数値)
健康寿命とは「健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間」です。そうすると冒頭の数字は「健康上の問題から日常生活が制限される」期間(年数)であるとともに「何らかの介護を必要とする可能性が⾼い」期間といえます。
 総務省の『就業構造基本調査(平成24 年)』によると、家族等を介護している⼈は550 万⼈以上で、そのうちの約5割が働きながらの介護です。また、介護を理由に離職した⼈は、平成24 年9⽉までの1年間で10 万⼈以上に上ります。
 そのような中、2017 年1⽉に育児・介護休業法が改正され、介護休業が対象家族1⼈につき「原則1回93 日まで」から「3回を上限に通算93 日まで」になりましたが、なぜ、介護休業は“93 日=約3か⽉”なのでしょうか。
 介護休業「93 日」は、“介護に関する⻑期的⽅針を決めるための期間”と国は位置づけています。⾔い換えれば、⾃らが介護に専念するための休業ではなく、介護と仕事の両⽴に必要な介護サービスの相談や申請等を⾏い体制を整えるための「準備期間」としての休業です。
 いざ介護が必要となった時、仕事との両⽴が可能な介護サービスが望むように受けられれば問題はありません。しかし、現実は要介護者の状況によっては、サービスを受けられないことや施設の空きを待たねばならないこと等もあるようです。また、介護は育児と違って年数経過による状況改善が少ないことに加え、先の予測がつかないという特殊性を持ち合わせています。そして、このようなことが一因となり、不安や焦りが増幅し⼼⾝共に疲れ果てた末に、介護離職や介護うつ、介護虐待、介護⼼中といった悲惨な事態を引き起こすこともあります。
 超⾼齢化が進⾏する日本。介護を取り巻く環境整備と課題の解消は待ったなしの状態です。誰もが健康的な生活を送る権利を持っており、それを全体で守る―。支え合い助け合うことが、未来を変えるのではないでしょうか。
 

差別を食い止める【4月1日号掲載】

 1871(明治4)年の太政官布告、いわゆる『賤せん⺠み ん廃⽌令(解放令)』により、古い⾝分制度は廃⽌されました。
 しかし、その翌年に作成された『壬申じんしん⼾籍』と呼ばれる⽇本初の全国統⼀⼾籍には、廃⽌されたはずの⾝分や職業などが記載されたものもあり、そのうえ役場で自由に閲覧できたことから⾝元調査に悪用されることがありました。その多くは、結婚や就職の際に「出自」を探るもので、“差別”を助⻑する許されざる⾏為です。
 個⼈の出⽣から死亡までの親族関係等を公的に証明する、極めてプライバシー性の⾼い書類といえるのが“⼾籍”。現在は、個⼈情報の保護や⼈権擁護を目的に⼾籍法が改正され、原則「非公開」となっています。また、請求要件の厳格化と請求時の本⼈確認の徹底など、管理も厳しく⾏われています。しかし、それでもなお不正請求や不正取得が全国で散⾒されています。
 このような事態を⾒かねた⼤阪府⼤阪狭⼭市は、2009(平成21)年、全国で初めて『本⼈通知制度』を導⼊しました。この制度は、「事前登録者」の⼾籍などを第三者や代理⼈に交付した場合、その交付の事実を「事前登録者」に通知するものです。このとき、「事前登録者」が関与していない(知らない)交付であった場合、不正請求や不正取得の可能性が⾼まることから、通知制度は悪用や犯罪に対する「抑⽌⼒」として期待されています。⽇⽥市では2013(平成25)年から当制度が導⼊され、いまでは県内の全市町村が導⼊済みです。
 ⾝元調査を「しない・させない・許さない」社会の実現のために、⼀⼈ひとりが本⼈通知制度の目的を正しく理解することが重要です。その上で、積極的な登録⾏動によって「差別はNO︕」の強い意思を⽰すことが、豊かで安心な社会の構築につながるはずです。


※本⼈通知制度の申込みは、市役所1階市⺠課及び各振興局・振興センターで受け付けています。

あれから70年・・・世界人権宣言【5月1日号掲載】

 『世界⼈権宣⾔』が国連で採択されてから、今年で70 年の節目を迎えます。この宣⾔は、⼆度の世界⼤戦の反省から“⼈権の尊重”と“平和の実現”を目指したもので、前文と30 条の本文で構成されています。
 この宣⾔「世界で最も多くの⾔語に翻訳された文書」としてギネス記録に認定されていますが、実際に読んだことがある⼈は⼀体どれぐらいいるでしょうか︖
 世界各国が、“将来の世代を救うために”という思いを込めた宣⾔の採択から70 年となる2018 年、国連の事務総⻑は新年のあいさつの冒頭で「昨年の就任時、私は2017 年を平和の年とするよう訴えかけました。残念ながら、世界は根本的に反対の方向へ進んでいます。2018 年の元旦にあたっては、もう訴えることはしません。代わりに非常警報を世界に発します。」と世界が危機的な状況にあることを強く語っています。そして、2017 年を振り返り、紛争の激化や核兵器への不安、気候変動、⼈権侵害などを列挙したのち「結束こそが解決への道。私たちの未来はそこにかかっています。」という⾔葉で結び、各国のリーダーに向け「団結と結束」によって危機的な状況に⽴ち向かおうと呼びかけています。
 事務総⻑が危惧きぐしてやまない「反対の方向に進もうとする世界」を引き戻すため、わたしたちができること。
 それは、≪戦争を起こしてはいけない、⼈権の確⽴が永久平和に通じるという誓いを込めた、世界⼈権宣⾔を世界の各国が再認識する≫こと、≪世界中の誰もが、⽣まれながらに⾃由で、同じ⼈間として平等で⼤切にされる存在であることを忘れず、⾃分と相手との違いを認める寛容で包括的な心を育む≫ことではないでしょうか。
 その上で⼤切なことは、⾃分⾃⾝の未来、みんなの未来、そして次の世代のために「⼒と心を合わせる」ことです。

日本は「単一民族」?【6月1日号掲載】

 「トナカイ」、「ラッコ」、「シシャモ」…これらの⾔葉は全て<アイヌ語>が語源と⾔われています。アイヌ語は、北海道や東北地⽅北部等の先住⺠族であるアイヌの⼈々が使⽤する独⾃の⾔語です。
 アイヌの⼈々は、アイヌ語の他にも⼝承⽂学(ユーカラ)、⺠族⾐装、伝統的儀式など、独⾃の⽂化や伝統を受け継いできました。しかし、明治政府の「同化政策」によって、日本語の使⽤が強制され、狩猟などの独⾃の習慣や風習を禁止された上、保有していた土地の所有さえも認められませんでした。その結果、アイヌの⼈々は⺠族の誇りや尊厳だけでなく、⽣活の基盤を奪われ貧困にあえぎ、さらには様々な差別や偏⾒を受けました。
 アイヌの⼈々の⺠族としての誇りが尊重される社会の実現に向けた動きに変化が⾒え始めたのは、平成9年。この年『アイヌ⽂化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』(アイヌ⽂化振興法)が施⾏されました。また、平成19年には『先住⺠族の権利に関する国際連合宣⾔』が国連で採択され、わが国では平成20 年に『アイヌ⺠族を先住⺠族とすることを求める決議』が国会で採択されました。
 政府が公式にアイヌ⺠族を「先住⺠族」と認めたことを契機に、その翌年には「アイヌ政策推進会議」が発⾜し、失われていった独⾃の⽂化や伝統の継承と国⺠のアイヌに対する正しい理解と知識の共有に向けた政策が進められました。
 しかし、国が平成28 年に公表した、アイヌ⺠族を対象とした意識調査結果によると、72.1%もの⼈が「差別や偏⾒がある」と回答し、今もなお差別や偏⾒が残る現実が浮き彫りになりました。
 かつて、ある総理⼤⾂が「日本は単⼀⺠族」と発⾔したことがありましたが、日本の歴史をさかのぼると異なるいくつかの⺠族に分類されます。差別や偏⾒をなくすために肝要なことは、日本は単⼀⺠族ではなく、私たちのルーツは多様であるという事実とその歴史や⽂化を理解することではないでしょうか。

母子の笑顔を守ろう【7月1日号掲載】

 ⽇本︓0.9 人/1,000 人。
 パキスタン︓45.6 人/1,000 人。

 この数値は、本年2⽉にユニセフが発表した『⽣後28 ⽇未満で死亡した乳児』の割合です。⽣後間もない⾚ちゃんの死亡率が世界⼀低い⽇本と最も高いパキスタン。その差は約50 倍です。
そんな“⾚ちゃんが安全に⽣まれる国”⽇本で、妊産婦(お⺟さん)の死亡原因の1位が「⾃殺」という悲しい現実を知っていますか。
 東京23 区を例にあげると、平成17 年からの10 年間に計63 人の妊産婦が⾃殺で亡くなっています。(平成28 年東京都監察医務院などの調査結果)さらに、出産後に⾃殺した産婦の3分の1が「産後うつ」であったとの報告もあります。⾃殺や虐待などにつながる恐れ
がある「産後うつ」は、産婦の約11 人に1人が患うとされ、その他のうつ罹患率より高い値を⽰しています。
 出産後の急激なホルモンバランスの変化、育児不安、ストレスなど「産後うつ」を引き起こす要因は多種多様です。また近年、核家族化や出産年齢の高齢化などを背景に、頼れる親族などが⾝近におらず、産後のサポートや助⾔を受けられない妊産婦も増加しています。
こうした妊産婦が孤⽴し、⼼⾝共に疲弊し不安が増⼤していく姿は想像に難くありません。
 このような状況を踏まえ、国は昨年の4⽉に「⼦育て世代包括⽀援センター」の全国展開が可能となるような法改正を実施するとともに、8⽉には「産前・産後サポート」と「産後ケア」事業のガイドラインを公表しました。⺟⼦がどこに住んでいても安⼼して健康な⽣活が送れる社会の構築を目指し、妊娠・出産から⼦育てまで切れ目のない⽀援体制の整備に乗り出しています。
 ⾚ちゃんの健やかな成⻑を⾒守るためには、周囲の協⼒はもちろんのこと、⺟親の良好かつ安定した⼼⾝状態は⽋かすことができません。⺟親の孤⽴を防ぎ、ささいな疑問や不安などを気軽に話せる人と人のつながりが『⺟⼦の明るい笑顔が溢れる地域』を形成していくはずです。
 

[夏]差別解消への日【8月1日号掲載】

 ⼤分県の8⽉は「差別をなくす運動⽉間」。毎年、県下各地で様々な啓発活動が⾏われていますが、なぜ8⽉なのでしょうか︖
 理由は、1965(昭和40)年8⽉に『同和対策審議会答申』が出されたことによります。同和問題の解決が国の責務であり国⺠的課題と謳った答申には、部落差別は「⼼理的差別︓差別的な⾔動、偏⾒など」と「実態的差別︓⽣活環境の未整備など」に分けられると記されています。
 国は1969(昭和44)年から33 年間、差別の解消に向け「特別対策」を実施しました。様々な取組によって⽣活環境などの格差解消は進み「実態的差別」の解消には⼀定の成果があった⼀⽅「⼼理的差別」に⼤きな変化は⾒えないままでした。にもかかわらず、特別対策の終わりとともに《部落差別はもう解決した》《部落差別は過去のこと》《部落差別の存在に実感がない》などの意識が強まり、その結果「⼼理的差別」の実態までもが⾒えにくくなってしまいました。
 そして現実…。特別対策の終了から16 年が経過した今でも結婚差別や⾝元調査は後を絶たず、さらに、多くの⼈が利⽤するインターネット上では同和地区に向けた差別的な書き込みが⾏われるなど、新たな深い問題が起きています。
そのような状況を踏まえ、2016(平成28)年に部落差別のない社会の実現を目的とする『部落差別の解消の推進に関する法律』が施⾏されました。法に「現在もなお部落差別が存在する」と明記されていることからも、差別の解消に向けた新たな⼀歩として『部落差別』に対する意識を変えていかなければ解消への道は遠のくばかりです。
 部落差別は過去のことでも終わったことでもありません。今もなお差別に悩み、苦しんでいる⼈がいます。⼤分県の8⽉は「差別をなくす運動⽉間」です。改めて部落差別の歴史的経過や現状について正しく理解し、差別の解消には何が必要なのかを真剣に考える「夏」です。

ありのまま【9月1日号掲載】

 2学期―。制服に⾝を包み⾃転⾞や徒歩で通学する⽣徒の姿が街に戻ってきました。
その制服が“ズボンかスカートか”たったそれだけの⾒た目を基準に男⼥を区別することは、果たして正しいことでしょうか。
 全国では、⽣徒⾃らが制服を⾃由に選択できる学校が徐々に増えています。例えば≪上着は全員同じブレザー≫≪ズボン、スカート、リボン、ネクタイは⾃分で選べる≫等々。これまでにも、寒さ対策として⼥⼦がズボンを選べる学校もありましたが、今は性的少数者への配慮から性別を問わず制服を選択制とする動きが高まっています。
 人の性には「心の性」と「⾝体の性」そして「恋愛対象の性」があり、心と⾝体の性が必ず一致するとは限りません。そして、心と⾝体の性が一致しない⽣徒にとって、⾃分が認識している性とは異なる制服を着て学校⽣活を送ることは、強い違和感やストレスをもたらし、ひいては不登校の要因となることもあります。
 近年では、性的少数者やLGBTに併せ『アライ(Ally)』という⾔葉も聞かれるようになってきました。⽇本LGBT協会のホームページによると、アライは【正しくはストレートアライ。⾃分はLGBTでは無いけれどLGBTの人たちの活動を支持、又は支援している人たちのこと】とされています。
 そして、そのような活動、支援の可視化を図るため、レインボーグッズを⾝に着ける人も増えています。性的少数者のシンボルカラーとして世界的に使用されている『6色のレインボー』は、性の多様性を表すとともに「多様性を守る」という思いが込められたカラーです。⾔い換えると性的少数者のみならず、広く全ての人の「ありのまま」を守る気持ちを表現しています。
 学校や社会には、集団⽣活の秩序を守るため一定のルールや約束が存在します。各学校のルールであり、伝統のひとつである「制服」を変えることは容易ではなくとも、互いの多様性を認め合い、誰もがありのままの⾃分でいられる配慮や環境づくりについて⾏動を起こすことは、社会に巣⽴つ若者の人権意識の芽⽣えにつながるはずです。
 

安心して暮らせる・・・「共生社会」【10月1日号掲載】

 「津久井やまゆり園」。この施設の名前を聞くと、あの残忍な事件が思い出されます。19人もの尊い命を奪ったこの施設の元職員は<障がい者は不幸をつくることしかできない>という⾝勝⼿かつ差別や偏⾒に満ちた⼼情を凶⾏に及んだ理由としています。
 その事件の3か月ほど前にあたる平成28年4月、障がい者やその家族の思いを反映した前⽂で始まる『障がいのある人もない人も⼼豊かに暮らせる⼤分県づくり条例』が施⾏されました。親が亡くなった後の問題や障がい者の性・恋愛・結婚・出産・子育てなども規定され、他に類を⾒ない条例となっていますが、啓発リーフレットに次の⼀⽂があります。(※⼀部抜粋)
 

 障がいのある人やその家族の⽣きづらさは、今なお深刻であり、無理解や偏⾒、差別によって就学、就労や医療現場等において必要な支援を求めることができなかったり、将来夢や希望をあきらめざるを得ないなど、苦しみ傷つけられる人がいます。
 こうした⽣きづらさを家族だけで抱え込み「願わくは、この子より1⽇でも⻑く⽣きたいと思ったことがある」という障がいのある子の家族の悲鳴にも似た声も寄せられています。


 不幸を作っているのは「障がい者」ではありません。社会の無理解や偏⾒が障がい者やその家族の⽣きづらさを助⻑しているのです。その⽣きづらさや家族に降りかかる負担をやわらげるためには、正しい認識のもとにある助け合いや支援が必要です。
 社員の7割が知的障がい者というチョーク⼯場の「⽇本理化学⼯業」。この会社では、障がいのある社員それぞれの理解⼒に合わせた作業⼯程を設計しています。「どうしてできないんだ︕」ではなく「どうすればできるか︖」を熟考し、作業を可能とする⼯夫と⽅法によって環境整備を図っています。その結果、健常者以上に研ぎ澄まされた集中⼒や技術⼒を発揮し、会社で⽋くことのできない存在となっています。
 障がい者の実⼒やスキルの発揮を阻害する障壁を取り除くことは、経済や社会の発展をもたらします。そして、その原動⼒になるのは「共に⽣きる」⼼です。
 

「8050問題」【11月1日号掲載】

 1980年代から社会問題として注目され始めた「ひきこもり」。2015年に政府が⾏った全国査によるとその数は、推計54万人にのぼるとされています。
 1980年代当時は、不登校等がきっかけで「ひきこもり」は⼦供や若者の問題とされていました。そのため、上記の調査は、対象年齢を15〜39歳に限定して実施されています。
 ところが、約30年の時が過ぎた今、当時「ひきこもっていた」⼦供や若者の中には、今も同様の状態が続き、中⾼年を迎えた人もいます。同時にその人の生活を支える親の⾼齢化は、現役を退いたことによる収入減や病気、又は要介護など「ひきこもり」の⻑期⾼年齢化と合わさり、深刻かつ複雑な問題へと発展しています。
 ⽇本では特段の事情がない限り、中⾼年は働き盛りという意識があり<働かないのは⽢えや怠けであり、ひきこもりは⾃⼰責任・家族の責任>というような根強い考えが伺えます。さらに、親⾃⾝が⻑期化に⾄ったこと等の責任を強く感じると同時に「ひきこもり」を恥とし、その事実を隠した結果、家族が社会から孤⽴し生活の困窮を招き、過酷な状況に陥っている現実も少なくありません。
 このような、主に80代の親が50代のひきこもりの⼦の生活を支え社会から孤⽴する新たな社会問題は『8050(ハチマルゴーマル)問題』と呼ばれます。国もこの問題に危機感を強め早急な実態把握と対策のため、40〜59歳を対象として本年度に初の実態調査を⾏うこととしています。これまで国は、ひきこもり地域支援センターの全県設置やひきこもり支援に携わる人材の育成などの対策事業を推進してきましたが、その支援の多くは就労が中⼼でありゴールでもありました。しかし、⻑期複雑化した「ひきこもり」の支援は、就労支援の前提として、外出や人の中で数時間過ごす、人との会話の練習などの支援が急務とされています。
 そのうえで、在宅ワークや個別作業、短時間勤務など、柔軟な就労を可能とする社会環境の整備が急がれます。
 

”食品ロス”を”支援活動に”【12月1日号掲載】

 環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア⼈⼥性、ワンガリ・マータイさんが2005 年に来⽇した際、感銘を受けた⾔葉の⼀つに「もったいない」という⽇本語がありました。マータイさんはこの⾔葉こそ「ごみの削減」と「再利⽤」、「再資源化」に対する尊敬の念が込められた⾔葉であるとの想いから、国連において「MOTTAINAI」を提唱したことで、環境を守る活動
を意味する世界共通語になっています。
 国連によると世界では毎年、⾷料⽣産量の3分の1に当たる13 億トンを廃棄している⼀方で、9⼈に1⼈が飢えに苦しんでいると⾔われています。
 ⽇本国内においては、⾷料消費全体の3割にあたる2842 万トンの⾷料が廃棄され、うち⾷品ロス(まだ⾷べられるのに廃棄されている⾷べ物)が、約646 万トンもあります。
 そして更に、所得の低い貧困世帯の割合が増加傾向にあり、6⼈に1⼈の割合で貧困世帯の⼦供がいるという状況です。
 このような状況もあり、2000 年以降⽇本においても「フードバンク活動」が全国に広まっています。この活動は、⾷品ロスのような捨てられている⾷品のうち品質に問題のない⾷品を国内の十分な⾷事をとることのできない貧困世帯やその⼦供たちへの支援につなぐことがねらいです。
 ⾷品ロスの発⽣源は、家庭から出るものが44%、残り56%が⾷品メーカーや⼩売店からの期限切れの廃棄⾷品が主な原因であると考えられています。
 県内においても、組織や企業が連携し、2016 年「フードバンクおおいた」が設⽴され、企業や市⺠からの寄贈を受け付けるとともに、集められた⾷料は“緊急⾷料支援”や“⼦ども⾷堂などへの支援”、“災害被災者の支援”等に活⽤されています。
 この活動のように、助け合う仕組みづくりを⼤切にし、より安⼼して暮らせる⼼豊かな街を目指していきましょう。
 

この記事に関するお問い合わせ先

日田市 市民環境部 人権・部落差別解消推進課 啓発推進係(人権啓発センター)
〒877-8601 大分県日田市田島2丁目6番1号(市役所別館1階)
電話番号:0973-22-8017(直通)
ファックス番号:0973-22-8259

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