2019年人権コラム「心、豊かに」

更新日:2021年03月31日

『人権コラム 心、豊かに』は、「広報ひた」1日号に掲載(毎月)しています。

外国人が暮らしやすいまちづくり【1月1日号掲載】

 政府は2016 年に、あらゆる場で誰もが活躍できる、全員参加型の社会を目指すため「ニッポン⼀億総活躍プラン」を閣議決定しました。少⼦⾼齢化に伴い確実に就業⼈⼝が不⾜となることから、働き⽅改⾰の⼀環として、⾼齢者の就労促進や⼥性の活躍、障がい者の就労⽀援などへの取組を始めています。また、昨年の第197 臨時国会でも、本年4⽉以降の⼈⼿不⾜の解消に向けた⽅策として、外国⼈労働者の受⼊れを拡⼤する改正出⼊国管理法が成⽴しました。
 わが国で働く外国⼈は約128 万⼈に上り、労働の担い⼿としてだけでなく、地域社会の担い⼿としても活躍していますが、まだまだ⼈⼿不⾜は解消されていないのが現状です。
2016 年に実施した⼈権に関する市⺠意識調査では、外国⼈に関する⼈権問題で「特に問題となっていると思われるもの」の回答の中に「外国語で対応できる病院や施設等の整備が不⼗分」、「地域とのふれあいや理解を深める機会が少ない」という回答が多くありました。
この調査結果を踏まえ、⽇⽥市では昨年度「市⺠⼀⼈ひとりがお互いに⼈権を尊重しあう明るく安⼼して暮らせる⼼豊かな共⽣社会の実現をめざして」を基本目標に、⽇⽥市⼈権施策基本計画の⾒直しを⾏いました。
 その基本目標の中で、外国⼈をめぐる問題対策の⽅向性の⼀つに、外国⼈が地域社会の⼀員として受け⼊れられ、安⼼して充実した⽣活を送れるよう、外国⼈が暮らしやすいまちづくりを推進していくことを定めました。
 今後開催されるラグビーワールドカップ2019 や2020 年の東京オリンピック・パラリンピック、そして2025 年に開催が決定した⼤阪万博などによって、世界各国から⽇本に訪れる外国⼈の増加が⾒込まれます。国籍や⽂化の違いを互いに認識して、思いやりの⼼で接し、共に快適な⽣活を送ることで外国⼈が暮らしやすい、そんな“まちづくり”につながるのではないしょうか。

フリーランスの人権【2月1日号掲載】

 近年、労働⼈⼝の不⾜や景気の影響によって、様々な業種で「働き⽅改⾰」が⾏われ、在宅ワークや複業などの多種多様な働き⽅が認知され始め、そのなかでも“フリーランス”という⾔葉をニュースやドラマ等でよく聞くようになりました。“フリーランス”とは特定の企業や組織に属せず、⾃らの技能を提供することによって社会的に独⽴した個⼈事業主のことです。⾼い専門性やスキルを⽣かす職業を中⼼に広まってきており、フリーランスの⼈⼝は年々増加してきています。
 しかし、企業などに属していないからと⾔ってセクハラやパワハラなどの問題がないかというと、そういうわけではありません。むしろ、受注する仕事の有無が収⼊に直結するフリーランスにとって「今の仕事がなくなるかもしれない」という不安から、セクハラやパワハラに対して強く拒否できない場合があります。専門性が⾼い職種が多いため、仕事を発注する企業等も限定されやすく、その業界での評判を気にして、発注者からハラスメントを受けても相手を訴えることに消極的になってしまう場合もあるのです。
 また、フリーランスは⾃営業であり、仕事を⾃由に選ぶことができるため「仕事相手と取引を中止し、関係を断ってしまえばいい」という認識によって周囲からの理解も得づらく、問題が起きても家族や友⼈にも相談することが難しいのが現状です。
 労働⼈⼝が減少している中、⾼い専門性やスキルを持ち活躍するフリーランスは、貴重な⼈材であるとともに、尊重されるべき⼈権を有する一⼈の⼈間です。たとえ業務を発注したのであったとしても、そのことを盾に、何を要求してもいいというわけでは決してないのです。
業務の効率化だけでなく、お互いに尊重しあえる環境を作ることが本当の意味で「働き⽅改⾰」と⾔えるのではないでしょうか。

避難所での特別な配慮【3月1日号掲載】

 平成29年九州北部豪⾬で深刻な被害が出たことは記憶に新しく、現在、復旧・復興に向けた取組を⽇⽥市は進めているところです。また、昨年は⼤阪や北海道で発⽣した地震や⻄⽇本を中⼼とした広い範囲での豪⾬など⼤規模な⾃然災害に⾒舞われました。
 近年続く災害によって避難所⽣活を余儀なくされる⼈が多くいます。避難所では⾼齢者や障がい者、妊婦や乳幼児、外国⼈など、避難を⾏う際に特別な配慮が必要な⼈、いわゆる「災害時要配慮者」と呼ばれる⼈たちと⼀緒に⽣活をすることになります。
 災害時要配慮者は、避難所⽣活においても特別な配慮が必要になります。例えば、⾼齢者や障がい者、妊婦は、移動に負担や時間がかかってしまうため、トイレや出⼊⼝などへ移動しやすいよう居住スペースを確保したり、乳幼児がいる場合は、簡易的な授乳室を設置するなど対応が必要になります。また、⽇本語での意思疎通が困難な外国⼈は、避難所での情報がうまく伝わらないことがあります。外国⼈に情報を伝える際は、視覚的に理解しやすい案内表記の利⽤に加え、スマートフォンの翻訳アプリなどを活⽤して、コミュニケーションをとるなどの対応が求められます。
 避難所⽣活では慣れない環境や、いつ元の⽣活に戻れるか分からないという不安からストレスを抱え込んでしまいがちです。不安な状況で周囲の⼈に気を遣うことは難しい場合もあるでしょう。しかし、災害という「非常事態」だからこそ⽇頃から培った⼈権感覚が⽣かされる場でもあるのです。
 災害発⽣時は、避難所の運営スタッフやボランティアの支援が追いつかないこともあります。災害時要配慮者の「困りごと」に対して「誰かがすればいい」と考えるのではなく、避難所全体で周囲の⼈を思いやり、支え合っていくことが、不安な気持ちを少しでも和らげるとともに復旧・復興に向けた原動⼒を⽣み出すきっかけになるのではないでしょうか。

やりがいを持って働くために【4月1日号掲載】

 新年度を迎え、4⽉から新社会⼈になったという⼈も多いのではないでしょうか。これからの新⽣活を想像して期待に胸を膨らませていることでしょう。
 2017 年に内閣府が16 歳〜29 歳を対象に⾏った「⼦供・若者の現状と意識に関する調査」では「何のために仕事をするのか」という問いに、「収入を得るため」の回答が一番多く、その他に「仕事を通して達成感や⽣きがいを得るため」といった回答があることから、今の若者が仕事に対して収入以外にもやりがいを求めていることが分かります。仕事に対する夢や、やりがいを持つことはより質の⾼い成果を出すためにとても⼤切なものです。
 やりがいを持って働くために必要なことは「仕事が楽しい」、「⼈の役に⽴てている」という充実感や「仕事をやり遂げた」などの達成感を得ることです。また、任せられた仕事を達成し、成功体験を積み重ねることで自分に自信を持てるようになります。 しかし、経験が浅いうちは仕事を一⼈で任されることはそう多くはありません。徐々に仕事を任されるようになるとやりがいを感じ、責任感から無理な働き⽅をしてしまうことがあります。こうした問題は若者だけのものではありません。未経験の分野に転職した⼈なども、同じような状況になってしまうことがあるのです。また、様々な世代が同じ職場で仕事をしていく上で価値観の違いなどから意⾒が分かれることもあるかもしれません。そんな時はどちらか一⽅を否定するのではなく、お互いの意⾒を尊重し、意⾒をすり合わせていく中で新しい視点を学ぶことができ、お互いの成⻑にもつながります。
 仕事をしていく中で、普段から相談したりアドバイスを⾏ったり、様々な世代間でコミュニケーションを図り、良好な関係を築くことが⼈材の成⻑を促すとともに、やりがいを持って働ける職場をつくることになるのです。

リボンに込められた思い【5月1日号掲載】

 テレビのニュース等でリボン型のピンバッチを胸に着けている人や同じ色のリボンなどを身に着けて啓発活動をしている人たちを⾒たことはないでしょうか。これは「アウェネスリボン」と呼ばれるもので、“アウェネス”には「気付く・意識する」という意味があります。アウェネスリボンは「○○リボン」と名のつく活動のシンボルであるリボンを総称するもので、それぞれの色が表す様々な社会問題に対して、支援する活動への参加や賛同の意思表示として世界各国で使用されています。代表的なものとしてピンクリボンがあり、乳がんの早期発⾒や早期治療の⼤切さを啓発する意味があります。また、障がい者の社会参加の支援を意味するイエローリボンは、障がい者個人が尊重され⾃⽴できる社会の実現を目指す意思が込められています。⼥性へのDV(配偶者からの暴⼒)の根絶を意味するパープルリボン。さらに、北朝鮮による⽇本人拉致被害者救出やその家族の支援を意味するブルーリボンの⻘色は、被害者の祖国⽇本と北朝鮮を隔てる「⽇本海の⻘」、被害者と家族を唯⼀結んでいる「⻘い空」をイメージしています。その他にも、⽇本では児童虐待防止を意味し、海外では反人種差別を意味するオレンジリボンなど、⼀つの色が複数の意味を持つものや複数の色の組み合わせによって意味を持つものもあります。
 リボン以外のものでもそのリボンと同じ色の衣服や小物などのアイテムを身に着けることで支援の意思表示になります。⾃分が賛同する活動にアウェネスリボンがあるか調べてみるのも良いかもしれません。
 ⼀人ひとりの小さな⾏動から問題解決の糸⼝になったケースも少なくありません。「⼒になりたい」という思いを目に⾒える形で周囲に意思表示することで、その先の⾏動に移すきっかけとなります。⾃分だけでなく周囲の人にもリボンの色に込められた思いの輪を伝え、広げることから始めてみませんか。

犯罪被害者の二次的被害【6月1日号掲載】

 新聞やニュースなどを⾒るたび、理不尽な理由による痛ましい事件が報道されています。しかし、このような事件は決して他⼈事ではありません。警察庁の公表するデータによれば、昨年(平成30 年)1年間で確認された刑法犯(刑法等に規定する犯罪)は80 万件以上あり、そのうち殺⼈事件や強盗、放火等の凶悪犯は4,900 件も起きています。犯罪被害に巻き込まれてしまうと直接的な被害だけでなく、それに伴い生じる様々な二次的被害を受けてしまうこともあるのです。二次的被害とは、犯罪被害にあった後に周囲やインターネット上での誹謗中傷や⼼ない⾔動・無理解、報道機関の過剰な取材などによって、犯罪被害者やその家族・親族等が受ける精神的・身体的苦痛、経済的損失、私生活の平穏の侵害等を⾔います。
 こうした二次的被害については周囲の⼈たちに相談し理解を得ることが難しい場合があります。しかし、周囲に相談できない場合でも専門的な医療機関や⾃治体及び全国にある犯罪被害者の⽀援団体に相談するといった⽅法があります。⽇⽥市でも、犯罪被害者等が受けた被害の早期の回復及び軽減を図るため昨年の6 月に「⽇⽥市犯罪被害者等⽀援条例」を施⾏し、国、県、⺠間⽀援団体と連携して被害者が安⼼して暮らすことができるように総合的な⽀援を推進しています。
 また、私たち⾃身が意図せず二次的被害の加害者になってしまう可能性もあります。例えば、被害にあった直後に慰めや励ましのつもりで「頑張って」や「早く忘れた⽅がいい」と⾔ってしまう等の⾔動が被害者に苦痛を与えてしまうことがあるのです。
 犯罪被害に巻き込まれてしまった⼈が二次的被害を受けないようにすることは当然の権利です。その苦しみが少しでも緩和されるよう⼀⼈ひとりが理解を深めていくとともに、⾃らの⾔動で相⼿を傷つけないためにも、⽇頃から相⼿の⽴場に⽴った⾔動を⼼掛けることが二次的被害を生まないことにもつながるのです。

LGBTだけじゃない?~多様な性~【7月1日号掲載】

 「LGBT」という⾔葉を⽿にする機会が増えてきたのではないでしょうか。LGBTは⼥性同性愛者の「レズビアン(L)」、男性同性愛者の「ゲイ(G)」、両性愛者の「バイセクシャル(B)」、身体と心の性別に違和感がある人を指す「トランスジェンダー(T)」の頭⽂字をとった呼び⽅ですが、これ以外にも多様な性的指向(どのような性別の人を好きになるか)や性⾃認(⾃分の性をどのように認識しているか)があります。
 例えば恋愛感情を持たない「アセクシャル」や⾃分の性が定まっていない、または意図的に定めていない状態の「クエスチョニング」などのように、近年では様々な性に関する考え⽅も世間に知られるようにもなってきました。
 このため、LGBTのように個人を属性に当てはめるのではなく、全ての人が持つものであるとして「Sexual Orientation」(性的指向)と「Gender Identity」(性⾃認)の略称である「SOGI(ソジ⼜はソギ)」という呼び⽅が国連等を中心に使われるようになってきました。
 このように社会全体には多様な性に対する理解が少しずつ広まってきていますが、⼀⽅で周囲の理解が得られず、未だ苦しんでいる人がいることも事実です。同性愛等に理解を持たないアパート等の⼤家や不動産業者から賃貸契約を断られるなどのように周囲の無理解や
偏⾒からくる⾔動によって傷付いたり、不利益を受けてしまったりする「SOGIハラスメント」という問題も出てきているのです。
 人権を取り巻く社会が多様化していく中で、何かの枠組みに無理やり当てはめる必要はありません。誰もが⾃分らしく⽣きられるとともに互いを認め合う社会の実現には、⼀人ひとりに個性があり、それぞれが違うことを当たり前であると理解し、広げていくことが重要なのです。
 

好き嫌いではない~食物アレルギー~【8月1日号掲載】

 「好き嫌いをしてはいけない」と⼦供の頃に⾔われたことがある⼈が多いのではないでしょうか。確かに、偏った⾷事は成⻑や健康に影響を与えます。しかし、単純な好き嫌いで「⾷べない」のではなく⾷物アレルギーのため「⾷べられない」という場合もあるのです。現在日本では、約2⼈に1⼈は何らかのアレルギー疾患を持っているとされており、その中で⾷物アレルギーは体質やアレルギー源の種類によって最悪の場合死に至ることもあります。
 平成13 年から⾷品の表⽰に⾷品に含まれるアレルギー物質を明記することが義務付けられ、自分で⾷品を選ぶ際にはアレルギー源を避けられるようになりました。しかし、親戚やご近所の集まり、職場の同僚と⾷事をする際は、アレルギー源を避けようとしても周囲の理解がないと「好き嫌いをしている」という偏⾒の目で⾒られたり、⾷べることを強いられたりしてしまう場合があるのです。
 アレルギー疾患対策を総合的に推進することを目的に、平成26 年に施⾏された「アレルギー疾患対策基本法」の中でも国⺠の責務として「国⺠は、アレルギー疾患に関する正しい知識を持ち、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に必要な注意を払うよう努めるとともに、アレルギー疾患を有する者について正しい理解を深めるよう努めなければならない」と記載されています。このため、本⼈が⾷物アレルギーを持っていると⾔っているにも関わらず、⾷べることを要求することはもちろん、「好き嫌い」や「わがまま」といった偏⾒を持って接してはいけません。⾷物アレルギーを持つ⼈が、アレルギー源である⾷品を避けることは当然のことです。しかし、普段の⽣活で誰が⾷物アレルギーを持っているか⾒分けることは困難です。日頃から一緒に⾷事をする⼈がアレルギーを持っていないか「何か⾷べられないものある︖」と一⾔聞いてみることが、楽しい⾷事にするために必要な気遣いなのではないでしょうか。
 

外国にルーツを持つ人の人権【9月1日号掲載】

 来年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、様々なスポーツの話題を⽿にするようになりました。中でも、⽇本と外国にルーツを持つ⽇本人選手について話題になることが増えてきました。
 厚⽣労働省が⾏っている「人⼝動態調査」によると、2017 年の出⽣数は約94 万人で、このうち⽗⺟のどちらかが外国人である子供は約1万8千人となっています。これは約50 人に1人が外国にもルーツを持つということであり、このことは珍しいことではなくなってきています。
しかし、特定の国の出⾝者であることやその子孫であることのみを理由に⽇本社会から追い出そうとしたり、危害を加えようとしたりする⾏為(ヘイトスピーチ)といった、いわれのない差別や偏⾒を受けることがあるのです。
 このことが、マスメディア等で大きく取り上げられるなど社会的関心が高まってきたことなどによって、平成28 年に「本邦外出⾝者に対する不当な差別的⾔動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」が施⾏されました。法律の第三
条(基本理念)では、「国⺠は本邦外出⾝者に対する不当な差別的⾔動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出⾝者に対する不当な差別的⾔動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」とされています。このように、外国にもルーツを持つ人が、そのことを理由に不当な差別を受けることがあってはならないのです。
 現在、スポーツに限らず、幅広い分野で⽇本と外国にルーツを持つ人たちが活躍しています。さらに、外国人労働者の受入れ拡大等によって、外国にルーツを持つ人が増えていくことが予想されます。その中で、外⾒やそのルーツに捉われることなく、地域社会の一員として受入れることが「不当な差別的⾔動のない社会の実現」に必要なことではないでしょうか。

カスタマーハラスメント【10月1日号掲載】

 皆さんは「ハラスメント」と聞くとどのようなものを思い浮かべるでしょうか。「パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、モラルハラスメント」などは耳にすることも多いかもしれません。このように様々な“ハラスメント”が社会全体で問題となっており、国会等でも議論されるようになってきました。
 そうした中、ニュース等で「カスタマーハラスメント」という⾔葉を聞いたことはないでしょうか。このハラスメントは、顧客がお店等の従業員に対して暴⾔や暴⼒、過剰なサービスを要求するといった著しい迷惑⾏為のことです。以前から「悪質なクレーム(苦情や⽂句)」をつける⼀部の⼈たちが問題になっていましたが、この悪質なクレームなどによって従業員が体調を壊したり、精神を病んでしまったりすることが問題となり、ハラスメントであると認識されるようになったのです。
 しかし、現状はハラスメントとなりうるような悪質なクレームと通常の苦情や相談との線引きが困難で、業種によっては、それぞれの現場で判断しなければならないことも多いのです。また、顧客側も「自分は間違っていない」「このくらい当然だ」という認識の中で要求がエスカレートしていき、話し合いでは解決ができなくなる場合もあるのです。このように、カスタマーハラスメントの問題は誰か特定の⼈の問題ではなく、誰もが被害者や加害者になる可能性があるのです。
 お店等が誠意あるサービスの提供を⼼掛けていても、ミスは起きてしまうものです。その時の対応に不満を持つこともあるかもしれません。しかし、それを理由に相⼿の⼈格を否定したり尊厳を無視したりしてもいいということにはなりません。そのようなときだからこそ自分の感情をコントロールし、お店側も落ち度があれば、それを真摯に受け止め、問題の解決・改善を目指すことが、顧客側とお店側のお互いにとってより良い結果につながるのではないでしょうか。

働く女性の人権【11月1日号掲載】

 「男⼥の⼈権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活⼒ある社会の実現」を目的に、1999(平成11)年に制定された「男⼥共同参画社会基本法」の施⾏から20年が経過しました。本年6⽉の総務省による「労働⼒調査」では、⼥性の就業者⼈口が3,000万⼈を突破し、⼥性の社会進出が進み、様々な分野で活躍する⼥性が増えています。
 しかし、今もなお職場での⼥性に対する⼈権問題は残っています。例えば、⼥性が管理職に登⽤されづらい状況や、「⼥だから…」、「男だから…」と性別で任せられる職務の差があるなど、職場での差別待遇はいまだに問題が続いています。また、性的な嫌がらせなどのセクシュアル・ハラスメントや、働く⼥性が妊娠・出産を理由に不利益を受けるマタニティ・ハラスメントといった問題もあります。
 このように、⼥性の社会進出が当たり前になった現代においても働く⼥性の⼈権が、全ての職場で尊重されているとは⾔えません。
 こうした中、企業や⾏政の改善に向けた取り組みだけでなく、SNSなどを中⼼に世界中の⼥性がセクシュアル・ハラスメントや性的暴⼒の被害体験を共有し、被害告発や撲滅を訴える「#MeToo」運動や、⽇本国内でも職場で⼥性がハイヒールやパンプスの着⽤を義務付けられることに抗議する「#KuToo」運動などが広がってきており、様々な形で⾃分たちの権利を守るため⽴ち上がる⼈たちも増えているのです。
 ⼥性が⾃分の意思をはっきりと伝え、男性は相⼿の意思を尊重することで、働く⼥性の⼈権問題を減らしていけば、本当の意味で男⼥ともに能⼒を発揮し、全ての働く⼈が輝ける「男⼥共同参画社会」の実現につながるのではないでしょうか。

身近にある人権を考えよう【12月1日号掲載】

 「⼈権問題」と聞くとどのようなことを思い浮かべるでしょうか。⼥性の⼈権、⼦どもの⼈権、⾼齢者の⼈権、障害を理由とする偏⾒や差別、同和問題(部落差別)、アイヌの⼈々に対する偏⾒や差別、外国⼈の⼈権、HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏⾒や差別、刑を終えて出所した⼈に対する偏⾒や差別、犯罪被害者とその家族の⼈権、インターネットを悪⽤した⼈権侵害、北朝鮮当局による⼈権侵害、ホームレスに対する偏⾒や差別、性的指向を理由とする偏⾒や差別、性⾃認を理由とする偏⾒や差別、⼈⾝取引。法務省では、この16 項目の⼈権問題を国内における主な⼈権課題としており、さらに「東⽇本⼤震災に起因する偏⾒や差別」を加え、啓発活動強調事項の17 項目としています。また、これ以外にも様々なハラスメント等の問題が近年増加しています。
 このように例を挙げていくと「難しい」とか「⾃分にはあまり関係ない」と考えてしまう⼈がいるかもしれません。しかし、「⼈権問題」は、実はとても⾝近なものなのです。普段の⽣活の中で、嫌だと感じたり悲しみや怒りを覚えたりする出来事の延⻑線上に「⼈権問題」があるのです。
 例えば、世界中で多くの⼈が利⽤するインターネット、特に個⼈が世界中に情報を発信できるSNSなどは、使い⽅を誤ると多くの⼈が傷ついたり、偏⾒や差別にさらされたりすることがあります。また、最近ニュース等でよく⽿にする「⼦供や⾼齢者に対する虐待」などは、犯罪として許されないことだけでなく、被害者の心に⼤きなトラウマを残してしまうこともあることから、⼈権侵害にもつながります。
 このように、普段の⽣活の中には多くの⼈権に関係する事があり、いつ⾃分が被害者や加害者になるか分かりません。⾃分には関係ないと思わず、⽇頃から⼈権について考え、理解を深めておくことで、いざ当事者となった場合に正しい⾏動をとることができるよう備えておくことが必要です。

この記事に関するお問い合わせ先

日田市 市民環境部 人権・部落差別解消推進課 啓発推進係(人権啓発センター)
〒877-8601 大分県日田市田島2丁目6番1号(市役所別館1階)
電話番号:0973-22-8017(直通)
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