官民集合研修 レクチャー1

更新日:2021年03月31日

官民集合研修タイムスケジュール

【レクチャー1】
「日田駅周辺のまちを変える~あなたが変えなくて誰が変える!~」

清水義次氏 株式会社アフタヌーンソサエティ

1949年生まれ。廃校になった中学校校舎をアートセンターに変え、自ら運営する3331アーツ千代田など都市生活者の潜在意識の変化に根差した建築のプロデュース、プロジェクトマネジメント、都市・地域再生プロデュースを行う。


文書:フリーライター 矢野由美
写真:日田市

ユニットマスターのリーダー・清水義次さん「あなたが変えなくて誰が変える!」

ユニットマスターたちが師匠と仰ぐ清水さん。一部では映画・スターウォーズに登場する「ヨーダ」とも呼ばれている方です。とても興味深い昔話から聞かせてくださいました。

清水さんのレクチャーの様子
昔々の江戸には、「家守(やもり)」という人たちがいた。いわゆる大家のことだが、不動産の管理から店子の揉め事の整理までしていた。当時の江戸の人口は町人だけでも60万人近くいたとされているが、いわゆる政治家・役人は250~300人でその役割を担っていたというのだから、この家守はとても大切なものだった。家守は家賃収入のみで、役所からの手当てはもらっておらず、まちのことを“自分のこと・自分たちのこと”として考えていた。
今必要なのは「現代版・家守」。人口が減りつつある今こそ、パブリックマインドを持って民間が立ち上がることが大切。「公共」は行政が行えばそれでいい、という時代は終わりつつある。
清水さんのレクチャーの様子
それはなぜか―残念なことに、行政と一緒にやると、書類作成を含む全てがまどろっこしい、スピード感に欠ける。自らで出資し、元手を作り、空きスペースで「まちのために」行えることを探すほうが非常に早い。
これまでの自分たちのことを振り返ってみて欲しい。社会の動きや構造が変わってしまい、バブル崩壊からデフレ社会へ転換、今後は人口が減り続ける。これまで計画されていた「人口右肩上がり」のやり方が通用しないのはわかりきったこと。
特に35歳以上の人たちには責任があると考えている。これまでのやり方ではダメなことに気づき始めているだろうし、実際まちが衰退しはじめていることを実感しているはず。この環境の中で何をすべきかを知り、自分たちより下の世代の人たちに「このようなときはこうすればいい」とアドバイスできる人材になっておいて欲しい。

日田のまちを変えるため、今回使用の許可を与えてもらえた場所は日田駅周辺の3物件。これほど恵まれた条件は他にはないだろう。また、駅周辺は駐車場や道路が多い。民間の土地ならば賃料を払い、道路ならば占有料を払えば、自分たちの望む楽しいまちができあがる可能性が大いにある。
現代版・家守会社を作ろう。腹を割って話せる人たちで本音の議論をしよう。得意分野が異なるチームがいい。会社にすると、みんなが「自分のこと」として考えられるので、どんなに小さな規模でもいい、会社から事業を興そう。まちの悩みを解決しながら商売できる仕組みを作ろう。そして、儲けが出ればまちに再投資をしよう。もちろん、家守会社に属する人たちそれぞれが兼業でできる小さな事業でいい。

プロジェクトの実行のプロセスは、

  • 事業は小さく始め、自立型まちづくり会社にする。
  • 実行・反応を見る・考えるを続ける。成功するまで。
  • ひとつの成功事例を作ることができれば、他の不動産オーナーを動かせる。まち全体が動き出す。
  • 利益を上げ続ける決意を持つ。
  • もしも補助金が必要なときは当初のみ。早く補助金から脱却。
  • 役所も補助金交付を我慢する。自立できるプロジェクトを発見できたら、金融機関からの融資へシフトする手伝いをしてもらいたい。

確かにそうです。これまでの都市計画などのもろもろ、人口も経済状況も“右肩上がり”で計算されたものだったはずです。しかしながら今、超高齢化・過疎化・若者の収入低下…暗いイメージの未来しか見えません。それでもなお、楽しく、補助金に頼らない自立した暮らしを得たいのなら、自分たちのこととして考えるしか方法はなさそうです。
どの自治体もほぼ同じように、税収も国に依存している地方交付税が今後減少していくでしょう。その中にあって、どう自分たちが生き残るか…。その点で一番頭を悩ませているのは市の職員や議員の皆さんです。同じ市で暮らしている私たち市民が、それを“スルー”していていい訳がありません。

「尖ったコンテンツと情報発信が命綱」

私たちは、何か面白そうな場所・美味しそうなお店・子どもを遊ばせることのできるところを探すために何を使っているでしょうか。そう、タウン誌やガイドブック、そしてインターネットです。それらで多く取り上げられるのは「尖ったコンテンツ」。
清水さんはこう言います。
清水さんのレクチャーの様子   
旅行へ出かける際、人は必ず下調べをする。中にはガイドブックには載っていない、自分の心を揺さぶるものを持っている所を目指す。私の場合、知り合いが久留米市に行くと聞くと、ある路地裏に小さな店を構えるコーヒー店で焙煎した豆を買ってきて欲しいと依頼する。とてもうまいコーヒーだ。これこそ、「尖ったコンテンツ」といえる。
面白いことに、情報発信数と来店者数とは比例している。わざわざ雑誌にお金を出して出稿しなくても、本当にいいもの・面白いものはネットへの露出数(口コミ・リツイート・シェア・いいね、など)が自然と増加する。昔はなかったもの、つまりインターネットで拡散したくなるコンテンツを作り、常に情報発信できる体制を作っておくことが必要。
もちろん、市外からの観光客を呼び寄せることも大事だが、日田で生産されたものを日田市民が消費できれば、自立した市となれる可能性が高まる。まちも活性化し、若者も「日田は楽しい」と思えるだろう。
悲しいかな、近年は大手チェーン店であっても苦戦している。インターネット通販が台頭してから、苦戦続きだ。それならば、そこでしか体験できないもの・手に入らないもの(つまり尖ったコンテンツ)を作り出すことが一番。
そのためには、まちの観察は最大のポイント。市民を中心として考えるのなら、まち行く人の服装や動き方を注意深く見てみよう。服装はいわゆる客層を現す。まちでの動き方を見れば、まちに何が不足しているかがわかる。客層と不足しているものを充分に理解できれば、自然と提供しなければならないものが見えてくるはずだ。

私たちは、日田のことを知り尽くしているだろうか? 足りないものを嘆き、安易に「日田は面白くない」と言っていないだろうか? そんなことを考えさせられました。

この記事に関するお問い合わせ先

日田市 総務企画部 企画課 企画調整係
〒877-8601 大分県日田市田島2丁目6番1号(市役所6階)
電話番号:0973-22-8223(直通)
ファックス番号:0973-22-8324

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