「水平社宣言」をご存知ですか?

更新日:2024年02月19日

「水平社宣言」とは

2022年(令和4年)3月3日で我が国初の人権宣言である「水平社宣言」が出されて100年を迎えます。

この宣言は、1922(大正11)年3月3日、京都市にある岡崎公会堂に部落差別に苦しむ人々が全国各地から集まり、差別からの解放と人間としての自由、平等の権利を自らの手で取り戻そうと創立した「全国水平社」の創立大会で読み上げられました。

水平社宣言の“水平社”は、「人間は生まれながらにして平等な存在である」という理念から名付けられ、宣言の最後に書かれた「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という言葉には、「人間を尊敬し、大切にし合うことで差別はなくしていける」という願いが込められています。また、宣言の原文には、長い歴史の中で不当な差別を受けてきた人々の痛切な思いとともに、すべての人があらゆる差別を受けることなく、人間らしく生きていける社会の実現を願う気持ちが込められています。

水平社宣言に込められた被差別の立場にある人々の願いに思いをはせるとともに、次世代を担う子どもたちのためにも、全ての人の人権が尊重される心豊かな社会の実現を目指し、一人ひとりが差別をなくす行動を続けていくことが大切です。

水平社宣言本文

綱領

一、特殊部落民は部落民自身の行動によって絶対の解放を期す
一、吾々特殊部落民は絶対に経済の自由と職業の自由を社会に要求し以て獲得を期す
一、吾等は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向って突進す

宣言

全國に散在する吾が特殊部落民よ團結せよ。

長い間虐められて來た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々とによってなされた吾等の爲めの運動が、何等の有難い効果を齎らさなかった事實は、夫等のすべてが吾々によって、又他の人々によって毎に人間を冒涜されてゐた罰であったのだ。そしてこれ等の人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。

兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、實行者であった。陋劣なる階級政策の犠牲者であり男らしき産業的殉教者であったのだ。ケモノの皮剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖い人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあった。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が來たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が來たのだ。

吾々がエタである事を誇り得る時が來たのだ。

吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行爲によって、祖先を辱しめ、人間を冒涜してはならなぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦る事が何んであるかをよく知ってゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。

水平社は、かくして生れた。

人の世に熱あれ、人間に光りあれ。

大正十一年三月三日

【要約文】

全国各地にちらばっている、被差別部落の仲間たちよ、団結しよう。

長い間、いじめられてきた仲間たちよ、明治になって50年の間、さまざまな方法と、
多くの人々によってなされた私たちのための運動は、何のありがたい効果ももたらさなかった。それは、そのすべてが、私たち自身が、また他の人々が、つねに人間を侮辱してきた罰だったのだ。これまでなされてきた、人間を軽んじ、憐れむような運動は、逆に多くの被差別部落の兄弟の思いを堕落させてきた。このことを思えば、今、私たちの中から、人間を尊敬することによって、私たち自身を解放するため、自らの自由と平等をもとめる集団運動を起こすことは、当然のことである。

仲間たちよ、私たちの祖先は自由と平等を心から求め実行してきた者だった。厳しい
支配政策の犠牲者であり、たくましく社会や文化を支えてきた者であったのだ。しかし、ケモノの皮をはいだことで、周りの人から優しいまなざしを奪われた。ケモノの心臓を裂いた代わりに私たちは、暖かい人間の心を引き裂かれた。そこへあざけりと、くだらない唾まで吐きかけられたのだ。だが、私たちの中には、なお誇りある人間の血が、枯れずに流れていたのだ。そして、私たちはその血を受け継ぎ、人が神のように大切にされる時代に出会ったのだ。その犠牲者の我々が差別を投げ返す時がきたのだ。殉教者キリストのように、荊(いばら)の冠(かんむり)を祝福される時が来たのだ。

我々が差別を受けてきた者であることを誇りうる時がきたのだ。

私たちは、自分自身をいやしくする言葉や、臆病になったりして、祖先をはずかしめたり、人間自身をおとしめたりしてはならない。人の世がどんなに冷たいか、人間を大切にすることが本当はどんなことであるかをよく知っているからこそ、私たちは、心から人生の熱と光を求め、その実現をめざすのである。

水平社はこのようにして生まれた。

人の世に熱あれ、人間に光あれ
 

1922年(大正11年)3月3日

 

出展:大分県教育委員会

部落問題学習推進のための指導資料 『水平社宣言より学ぶ』より

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